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 図書準備室は先輩の秘密基地らしい。勝手知ったるなんとやらで先輩はどこぞからボックスティッシュやタオルなんか持ってきて俺の体を拭く。「なんでそんなもんがここに」と聞く余裕もなく俺はぐったり。そんな様子に先輩はご満悦で拭きながらちゅうちゅうしてくる。「賢者タイム」ってもんがこの人にはないんだろうか。なんで出したばっかでこんなに楽しそうなんだろう。
 逆に俺はもうあたまんなか冴えまくり。俺はゲイになってしまったのかとか、先輩どういうつもりなんだとか、俺の体きもちわりーよとか。お母さんごめんなさいとか。そんな後悔や罪悪感でいっぱい。沸きあがって、死にたくなる。でも、そんな悩みは全部先輩の前では無意味なのだ。

「俺がお前に感じるように触って、お前がそれ感じちゃっただけだろ。悩むとこどこにあんのか、逆にわかんねー」
 この世の終わりだといわんばかりに沈んでいた俺に向かって事も無げに言う変態。
「はぁ?」
「お前気持ちいいことが好き。おれは気持ちよくさせんの好き。バランスいーじゃん」
「よくないです。おれ、ホモじゃないし」
 気持ちよけりゃそれでいいって、どんな理屈だ。
「うん、お前はソレでいいよ。「俺は嫌なんだ被害者なんだ」って思ってればノンケとしてのアイデンティティは保たれるんじゃねーの? 感じちゃっても全部俺のせいにしていいぞー。「感じちゃうのはこいつがうますぎるせい」なんて思われたら、そっちのほうがなんか光栄」
 ケタケタ笑う先輩。
「先輩が触らなきゃ万事解決しませんか」
「しない。俺はお前触りたい。超抱きたい」
 あんだけやったのにもあきたらず、にじにじと近寄ってくる。
「い、いやです。超いやです」
「そうそう、このかんじ。そのいやそーな眼。だけどお前は流されてくれる。そういうとこすげーかわいい」
「ぎ、ぎゃー! 止めろ変態! 顔近づけるな!」
 へろへろの腕を突っぱねて、膝まで下着がずり下がったままの足をばたつかせる。
「うん、逃げてもいいぞ。でも捕まったときは俺の好きにするからな」
 あばれる手をとって指先をぺろり。……なんだこの変態!
「もうカテキョいやです」
「却下。寮まで押しかけるから」
「……ひでぇ」
「そりゃ俺不良だし。あ、プリント拾わなきゃなー」
「宿題増やしてやる……」

 そういうわけで、何の解決も見出せないまま、俺は貞操の危機にさらされながらカテキョを続けていくことになったわけで。

 ……二ヶ月、二ヶ月の辛抱だ。

*****
参考(笑):『賢者タイム』(PCです)
要するに、射精後は冷めるということです。

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