20

 解放されたときには、ゆうに二時間がたっていた。午後の授業は完全なるサボタージュだ。いままでサボったことなんて一度もないのに、今は教室に帰るのすら億劫。もう動きたくない。てか、動けない。なんか全身マッサージされすぎて筋肉なくなったみたいな状態。

「よかっただろ」
 本棚にもたれかかってぐったりへばってる俺に、いわゆる「どや顔」で先輩が聞いてくる。
「……へんたい……」
 息が上がって悪態にも力が入らなかった。シャツははだけてるし、下は完全に脱げてたから履こうと思ったけど力入んなくて膝らへんで止まってる。なのに先輩は全然乱れてないなんて、不公平だ。下げたズボンをもうあげてかちゃかちゃベルトをしめている
 よかったかって?
 ……よかったよ。俺、男じゃなくて女になっちまったのかなって思うくらいよかったさ、うん。最初は「これって強姦なんじゃないの? 犯罪じゃないの?」なんてこともちょろっと思ったけど、先輩は俺のこと気持ちよくするばっかりで痛いのなんて何にもないし、無理やり突っ込んでくるとかないし、触り方とかなんかすげー大切にされちゃうし。いっそ痛かったほうが素直に恨めるってモンなのに、……おれ、たっちゃってたし。これで訴えたら逆に先輩かわいそう? なんてレベル。
 まず、昨日のとは質が違った。アレだって散々啼いて呼吸できなくて、俺死んじゃうかもって思ったのに、今日のはまるで違った。昨日が「がんがんいこうぜ」で、今日のはまさしく「腰すえてねっとり」。突っ込まなくてもセックスは成立するんだって思い知らされた。
 
 ……あなどっていた。俺は先輩を侮っていたのだ。
 このひとやばい。先輩の「腰すえてねっとり」は半端ない。

 まず、性器に触れない。体への愛撫ばっかり。シャツのボタン全部取られて、上半身をこれ以上ないってくらいに撫でられた。
 特に首筋とか耳とか耳の穴とかへそのまわりとか脇腹とか指のあいだとか、とにかく「何でそこで感じんの?」って場所を攻められて、啼いてしまって、自分でびっくりした。一番酷かったのは乳首。もうちくびとか、言うのもその響きもとんでもなく恥ずかしいんだけど、ここは悔しいことに昨日の時点で弱点だとばれていたから、触られ始めたときにもう「やめてくれ」って嫌な予感しかしなかった。予感は当たったには当たったけど、俺の予想してたものなんて、おこちゃまレベルもいいとこ。「ちょっとくすぐったくてビクつく」の範疇じゃないのだ。
 この人のスキルおかしい。俺があと1年してこの人と同じ歳になったってこうは成れないと本気で思う。
 指でこねるとかつまむとか、舐めるとかあま噛みとか、触り方や舌の動かし方や強弱の付け方が多岐にわたってて、攻め方のレパートリーありすぎだろう、と思った。どんだけそこ攻めんだよって状態。鼻でくりくりこすられたきは「あぁ、あっ」とか「やばい、やだ、へんになる」とか普通に喘いでしまった。……乳首触られて感じまくってた俺、ほんと消滅しろ。切実にそう願う。
 最初は、「学校でこんなこと駄目だ」って恥ずかしさや後ろめたさがあって、声上げるのは我慢しなきゃと思ってた。だけどあのあたりから「周囲へ聞こえないように」という配慮は頭からすっぽりなくなってたと思う。だってそんな余裕は向こうが与えてくれなかった。キスや愛撫で頭のなかはふわっふわだし、性器からは触られてもないのに先走りがとろとろしてて、汚れないように下を脱がされたくらいだ。お腹とか脇腹とか舐められるたびにビクついてたら、「可愛い」とか「エロイ」とか「やらしい」とか散々囁かれて、いかにも「セックスしてます」という有様。

 しかしこんなにへろへろなのに、まだソレは序の口だったわけで、俺の息子は触られてもいなかった。

 後ろから抱え込まれて、先輩が俺の脚を割ってソイツに触れたときは「あぁやっと」なんて思ったくらいで、今思うと死ぬほど恥ずかしい。
 待ち望んでいた刺激はやっぱり期待以上のもので、いきなり亀頭をぐりぐりつぶされ、指の腹押し付けられて、それだけで俺はひどい状態。うわごと言いまくり。そのうえ先走りをローションみたいに竿全体に広げられて扱かれたから、たまんなかった。
 たちまち駆け上る射精感。でも肝心なところで緩められて、なかなかいきたいのにいかせてもらえない。もどかしさで声が震え出る俺に、先輩は笑った。
「まだいくなよ。もっと声聞きてーし、こっち見て」
 なんて言って、俺の首を後ろに向かせる。
 ……なんという変態っぷり……。
 こんな声聞いて、こんな顔の男見て、何が楽しいのかやっぱりさっぱりわからない。俺なら萎える。だけど背後から先輩の固いものがしっかり当たっていて、先輩も興奮してるんだとわかると、「あぁ、俺、先輩とやらしいことしてるんだ」って実感が今更わいてきて、一気に恥ずかしくなって、顔が熱かった。あのときの俺の思考回路は超乙女だったと思う。
 じらされるたびに昂ぶって感度が上がるんだから、そっから先は朦朧としてしまってよく覚えてない。性器と胸を同時に攻められたときは「いきたい、いかせて」と外聞もなく懇願してた気がするが、……記憶違いだと思いたいし、忘れたい。
 気づいた時には足を上に開いた状態で押し倒されてて、先輩が上に覆いかぶさるみたいに乗っかって、お互いの性器をこすりつけあってた。いわゆる……うん、正常位、みたいな体勢。もうまるっきりセックス。
 先輩の手の中で二つの性器がいっしょに扱かれ、カリが引っかかったり皮がこすれたり袋がひしゃげちゃったりなんかするのだ。先輩もハァハァ言いながら時々喘ぐみたいに呻いて、その様子は下から見るとそりゃ壮絶に色っぽい。男前が眉しかめて汗かきながら髪を乱して呻いて、喘いで、腰振ってる。んで俺のこと見下ろして「すげーきもちいい」って笑いながらキスするんだ。それで興奮した俺は立派な変態なんじゃないのかってちょっと焦った。もちろん俺はここが学校だってことも忘れて始終啼きっぱなし。それ見た先輩に「エッチだなーかわいすぎるだろ」なんて言われて、周囲に聞こえないよう黙らせるために散々キスされた。

 さいごはもう、こね回されてどう表現していいかもわかんないような快感に襲われながら、たくさんのキスと言葉でくすぐられて、一際おっきく喘いで、果てた。「気持ちよすぎて死ぬ」なんて恥ずかしいこと思いながら。

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