13

 揺さぶられていた腰が痛い。床についてた膝が擦り剥けてて痛い。昨日の出来事が夢ではなかったのだと文字通り「痛感」する。
「先輩の変態……。こんな男、抱くなよな……」
 シャワーを浴びに行った本神先輩をドアの向こうに見送って、俺はつぶやいた。
 先輩は、俺が睨むと「その気」になって「そそられる」と言っていた。
 おれはてっきり喧嘩方面のことだと思っていたし、まさか自分がそういう対象になるなんて思うわけがない。
 俺の体は、男そのもの。確かに細身だとは思うけど、腹筋だって割れてるし、足や腕も剣道で鍛えて筋肉質だ。薄いながらも腋毛だって生えてる。触ってうれしいすべすべ肌ってわけでもない。そして顔は人相の悪い地味顔。こんな俺に欲情する先輩は、変だ。変態だ。趣味悪い。ゲイだってもっとましな相手を選ぶぞ。
 ……でも俺は、そんな変態さんによってとんでもない快楽を知ってしまったわけで。

「あの変態、うますぎるんだよ……」

 昨日、「素股」というものを知った。知ってしまった。火照った体がバックの一回じゃ収まるわけもなく、あの後は盛ったサルのように色んな体位で求められ、翻弄され続けた。初めての快感の渦の中で必死に声を殺そうとしたのに、先輩はなぜかその声を聞きたがる。声を出せと散々に攻め立てられ、俺は無様に啼かされつづけた。結果、今ものどが痛い。こんな男の鳴声を聞いて一体何が楽しいんだろう。
「絶対隣のカップルに聞かれたし……」
 穴があったら入りたい。そのまま一生出たくない。あの変態の眼の届かないところでひっそり生きたい。

 ああ、これからどうしよう。
 次の考査まで、二ヶ月。ここに通い続けるなんてできるのか? 初日でコレなんだぞ?
「俺、絶対流される……」
 意志は固いと自分では思っていたのに。……こんなに快楽に弱いなんて、思いもしなかった。

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