07

 俺を抱きたいといったくせに、片瀬は慌てふためいてしどろもどろになっている。立ち上がって背を向けた俺に、「ばかなことするな」「おまえにそんなことさせたいわけじゃない」「やめよう」「むりだ」そんなことを立ち膝になって言っているが、否定的な言葉なんて勝手に並べさせておけばいいと思った。どんだけ説得したって無駄なんだと思わせるために、俺は反論もしないで服をぬごうと手にかける。ワンルームマンションに脱衣所なんてものあるわけもないから、片瀬の目の前だ。
 ふと、手を止める。片瀬はそんな俺の様子にほっとして腰を下ろしていたが、俺はまったく別のことを考えていた。

 そもそもこいつは、実際の俺の裸なんて見てたつんだろうか。と。

 はなはだ疑問だ。ちょっと不安になってきた。自慢にもならないが、俺は女がよく言う「男の色気」ってのとは無縁な体型だ。中肉だ。中肉。
 反対に片瀬はいい体をしていたはずだ。弓道をしているから、胸とか腕とかに綺麗な筋肉がある。
 やっぱり無理でした、なんてなったら、俺は脱ぎ損なわけで。かく言う俺もあいにくとゲイじゃないので、こいつの裸で興奮することはないだろうけど、たぶん触ったり刺激したりすれば何とかなるだろう。それに、入れるのは俺じゃないし。
 すべては片瀬の息子しだいだ。

 俺は、座っている片瀬の前に立って、顔を覗き込む。片瀬がびっくりした顔になる。
「お前さ、俺相手で、たつんだよな?」
 片瀬の眼が見開かれて、のどがひくりと震えた。
 まぁ、意地の悪い質問だよな。だけど許せよ。お前を引き止めるには、ちゃんと知っとかなきゃいけないことなんだから。
「やっぱり無理でした、なんて無しだぞ」
「みつや、何言って……」
「俺ここで脱ぐけど、お前、それ見てちゃんと興奮するんだろうな」
「馬鹿、みつや。そんなことしたら……」
 俺の問いに、片瀬の顔は色を失っている。
 ほう。そんなことしたらどうなるってんだ。暴走するのか。
 俺は片瀬の反応を見て、安心した。いつも落ち着いてる片瀬がてんぱってるのは、ちょっと面白くもあった。可愛いとも思う。
「ん。いけそうだな。よし、俺は風呂はいってくるけど、お前逃げんなよ」

 俺はためらいなく服を脱ぎ、風呂場に走った。

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