06

 ――――俺が思うに「市川光也」はガキ大将がそのまま大きくなったような男だ。

 多少幼いところもあったが、裏表が無くてきもちがいい性格で、懐に入れた人間に対しては遠慮はない分とことんあまい。
 光也の一番で特別であることが、俺の誇りだった。

 気づけば、恋をしていた。もう、8年になる。

 光也の人好きする雰囲気に惹かれる女の子は少なくなかったし、こいつもそれなりに恋人がいたり、ときには今回のように別れたりしていたのだ。その話を聞くのは全て俺の役目で、そのたび心臓がえぐれるような思いがあったけど、全幅の信頼を寄せてくれる光也が好きで、好きで、……どうしようもなく、好きで。彼のそばにいられるならそれもいいと思っていた。
 だけど、無理だった。
 「一生そばに」なんて言われては、もう駄目だった。うれしいのと同時に、とんでもない痛みに襲われた。彼が誰か別の人と寄り添うのを、一生、一番そばで見続けるなんて、俺にはできない。
 かたくふたをしていたはずの想いは、あっけなくこぼれてしまった。

 裏切った俺を、光也は責めない。俺の汚れきった思いを「そんなの打算じゃない」と言い、おれは泣きたくなる。
 お前がそうやって優しいから、俺はお前のことを諦めきれないんだ。
 だけどもう、ぜんぶおしまいだ。ぜんぶ。
 どんなに光也が望んだって、そばにはいられない。

 だって、抱きたいんだ。お前を。
 すでに頭の中では何度も抱いているんだ。
 俺は、そういう種類の人間なんだ。

 そう諦めかけた俺に、光也が立ち上がって言う。

「じゃ、シャワー借りるわ。……ケツって、やっぱお湯入れて洗った方が良いのか」

 俺は、自分の耳を疑った。

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