04

 俺はこいつとの関係をたまらなく心地いいと思ってたし、このまま続けばいいと思ったんだ。だけど、片瀬にとってはそうじゃなかったんだ。こいつにとってこの関係は、苦しくて、泣きたくなるような関係だったんだ。それがショックだ。俺は何年こいつを苦しめたことになるんだろう。

 片瀬が俺を好きだなんて、そりゃもうショックだ。彼女のことが頭からなくなるくらいショックだ。気持ち悪いとは思わないが、かなり凹む。何がへこむって、あいつにとって、恋は友情よりも大きかったということだ。片瀬が俺に片思いしているというんなら、おれだってそうだ。俺だって、こいつに届きもしない友情をずっと寄せていたんだ。俺だって片思いだ。
 おれは、こいつのことが好きだ。恥ずかしげもなく言うなら、大好きだ。俺は自分から片瀬を切り離すことなんてできない。こいつに恋愛感情をもてないからといって、そのせいで「さよなら」をする気にはなれない。

 彼女に別れを切り出されたときだって、こんなに往生際悪くなかった。

 俺は彼女のことは追えなかった。彼女がもう俺を好きじゃないなら、それはどんなに悲しくても仕方ないことだ。悔しいが、そう納得できる。

 だけど、友情はちがう。友情が終わるって、俺には想像もできない。どういう風に考えたって、関係をゼロにすることには納得できない。形が違うとしたって、お前も俺も相手が大切なのに。

「お前は、どうしたいんだ」
 こういう聞き方がずるいというのはわかってる。だけど、おれからお前に何か提案することはできないんだ。「ともだちでいよう」なんて、そんなの無理だってわかるから。
 片瀬は俺を見て、首を振る。
「いいよ。気持ち悪いだろう。俺は、もうお前の前には現れないから。……ごめんな」
 殊勝な言葉なのかもしれない。健気なのかもしれない。だけど、俺はその言葉に

 切れた。

prev | 目次 | next

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -