今日の彼はひどく機嫌が良くて、昨日みたとかの夢の話をするのを止めない。

あたしは彼の一挙一動を脳に焼き付けるのに必死で、彼の低い声が紡ぎ出すすてきな話を聞くことを疎かにしてしまったのだけれど、彼はそんなこと気にしてないようで、珍しく満面の笑みであたしに笑いかけてくれた。

彼のその笑顔を見た瞬間あたしは自分でもわかるくらいに顔が真っ赤になってしまって、でもそれを見られたくなくて、顔を背けて必死で隠した。

だけど変なところに目敏い彼はあたしの赤い顔に気付いて、にこやかな顔をそのままにからかってくるものだから、さっきまでさんざん聞いていたはずの(実際は聞き流してしまっていたけれど!)夢の内容を聞くことで話をそらすことにした。

「ね、ねぇアバッキオ、さっき話していた夢はどんな夢だったの?」

「なんだ、おまえ聞いてなかったのか?もう言わないからしっかり聞いておけよ。

…おまえと、しあわせになる夢だった。」

あたしはついに、真っ赤な顔を隠し通すことはできなかった。


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