この前壊してしまった眼鏡を新調したとき、いつもと違うデザインのものを選んでみたりだとか、いつもデスクワークばかりのお前と二人で買い物に出かけるとき、お気に入りの赤い靴を履かないで、お前の色、黒い靴を履いてみたりだとか、いつもより少しだけ、少しだけ素直になってみたりだとか。 そんな些細なことを気付いてくれやしないかと、ばかばかしいなんて思いながら、それよりももっと期待している自分にいらだつ。 だけどあの黒ずくめが俺に向かって言う言葉なんて、おはようとか次の仕事のことだが、とかそんなくだらないことだってくらい俺はずっと前から知ってる。 ●● ←→ |