短編 | ナノ


▼ ポイン



「サスケェ!受け取れ義理だぞォ!」
「煩ぇ!」義理じゃなかったらそれこそ殴りに行ってるわと喧嘩腰で返しながら目の前で完璧なフォームで投げてきた将来の兄の嫁であるナマエのボール状のそれをキャッチする。
大体食べ物を投げんなと咄嗟に落としたチョコばかりはいっているエナメルのボストンバッグを拾い、剛速球だったナマエの球を受け赤くなった手の平の上で転がるそれを中腰のまま見る。
「ただの野球ボールじゃねえか!」
「私が食べ物投げると思ってたなんて失礼ね」
未来の義理弟のサスケちゃんにはちゃんと手渡しにしてあげるわとゆったりと歩いて来て頭の上にポンと乗せられたカップケーキに調子狂うんだよと真っ赤な顔で吠えていれば何やら帰宅したらしい弟が騒いでるなと心配したイタチが家から顔をのぞかせた。

「サスケ、公道で騒ぐな」
「だって兄さん…ナマエ」
名前を出され流石にまずいと咄嗟にサスケの背中を叩くとイタチへと駆け寄った。
兄よりはるかに頭のいい彼女なはずだが、その様子は今日自分にチョコを渡しに来た女たちと何ら変わりない。
もじもじと手を擦り合わせ長い睫毛を瞬かせながらイタチの顔を見る。
夢にまで見たナマエの恋愛的な視線を受け表情は変わらないが頬を軽く染めたイタチがナマエの上目づかいに鼓動を速めていると後ろに回していた腕がイタチに何かを押し付けてきた。
「ば、バレンタインだから!」
普段よりさらに高めのテンションだったのは緊張からか。
声を翻してしまい恥ずかしそうに口を噤んだナマエに少し離れた位置でサスケがその様子を観察していた。
出合い頭、先に気付いた方がちょっかいを仕掛けるような間柄である自分から見れば新鮮な彼女の反応に珍しいものを見たと腕を組み顎を擦る。
イタチもイタチで休みなのに早朝からそわそわとしていた。
これを待っていたのだと思うと見ているこっちが火傷しそうだとイチャラブしている二人を放って自分の部屋に帰ろうとずり落ちかけた鞄をもう一度しっかりと肩にかけた。

兄の幸せそうな顔を見てすっかり忘れていたのだがナマエたちがいるのが自宅の玄関前である。
サスケは「家に帰れねぇ」と橙色に染まった自宅を見ながらナマエのくれたカップケーキを一口頬張ったのだった。


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