短編 | ナノ


▼ シルク



13日、女子の多くがお世話になっている人や意中の相手にあげるための材料を求めてチョコを買いあさっている中、ナマエもまた同じように菓子屋へと出向いていた。
今月はちょっと高くておいしいお米を買いあさってしまったのがいけなかった。
燃費が悪いのは重々承知していたのだが最近よく出会うカカシの銀色の髪を見ていると炊き立てご飯を連想してしまって我慢できなくなるのだ。
……まぁ、たまにカカシさんがお米の差し入れをしてくれるから会わないという選択肢はないのだけれど。差し入れのお米、どれもおいしいし。
まとめて作れば結果的に安上がりになるし、友人たちからも強請られているから毎年作ってはいるしで一つ多くなったところでどうってことはないのだけれどもカカシさんも私みたいにお米の方が好きだったら申し訳ない事になっちゃうな。
チョコ好きだといいのだけれど。そんな小さな悩みを抱えつつもかごの中に包装用の道具を放り入れていれば、最近仲良くなった紅さんが懸命に白と黒のチョコを見比べていた。

「紅さんはアスマさんにあげるんですか?」
「ひっ…!あ、あら…ナマエ」
背後から声をかけてくるから思わず構えちゃったじゃないと少し頬を赤くして口を窄めた紅に可愛いとナマエが頬に手を当てニコリと笑う。
からかわないでと頬をさらに赤くする紅がナマエの顔の前に手を出し視界を塞ぐがその手の横から顔を出したナマエがアスマさんにですよね?と唇に指を当てながら二つのチョコを見やる。
「そう…なんだけど手作りって初めてで」
今までは買ってたんだけど最近一緒に居れないからと大人の女性らしい悩みをこっそり打ち明けられナマエは耳元に吹きかかる吐息に擽ったそうに笑った。
微笑ましい、微笑ましすぎる紅さん!なんて可愛らしいんだと心臓をドキマギさせつつ結構長い時間なやんでいたらしい彼女に助言するためにポーチから喫煙者の同僚用のメモを取り出した。

「お前、これって見ない方が良かったんじゃないか」
紅に渡された時の反応をどうしようか。喜ぶのは当然なんだけど自然な演技できないんだよなぁ……。
ぷかりと煙草の煙を宙に浮かせたアスマの横でベストの裾を押さえつけられているカカシは今にも飛び出しそうだった足で踏ん張り飛び出しかけ倒れそうだった体制をどうにか持ち直すとアスマの隣にやはり同じように気配を消してたった。
「ナマエさんオレ以外にもチョコあげるなんて…」
理不尽な理由でご立腹している同僚のカカシを片目で見つつ、アスマは「女って大変だよなぁ」と教え子である一人のように空を見上げたのだった。


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