宝石とさよなら | ナノ


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「九尾のところにスパイが入り込んでいたらしい」
「干柿鬼鮫……、同胞殺しが自害してまで情報を渡そうとするなんてね」
それほど暁が心地よかったのかしらとため息を吐く水影を一瞥し、土影が作戦の練り直しを提案する。
各々それに頷きここまで静かにモトイからの報告を聞いていただけのミフネが最後に同意し、少数精鋭で増援を送るべきだなと影たちを見やった。

「オレが行……」
「ワシが行く!」
肘をつき指を乗せていた我愛羅がそう口にしかけたのをかぶせる様に土影が目を細めて主張した。
自分なら空も飛べる、移動が速い。そう理由づければ他の影たちもオオノキなら安心だと口々に返した。

確かに戦力的には問題はないが……。
我愛羅は、ナマエを揶揄うために腰をやったり死んだフリを仕掛け、そのたびにプチ騒動を起こしてきたチヨバアのことを思い出す。
いつもただのフリなのだから無視をすればいいのにと一度だけ提案したが、本当にやってた時が大変じゃないと小一時間説かれたことがあった。
ナマエの知り合いにそういう人間がいたのか、はたまたナマエが昔やらかしたことがあったのかは知らないが、それはもう脳が信号を腰に送るほどの表現をされたのである。
一種の暗示の類なのだが真面目な人間ほどかかりやすく、我愛羅はその日一晩中偽の鈍痛を抱える羽目になったのだった。

老人に無理をさせるべからずと無意識で暗示をかけてきたナマエに“教育”された我愛羅が、心底心配そうに大丈夫かと土影の顔を伺いながら尋ねた。
あの鈍痛はやばい。腰に爆弾という表現がよく分かったと翌朝げっそりしながら起床したのを思い出していた我愛羅だったが、表情筋が硬く本気で心配されているとは思わなかったようで、煽りととらえた土影が机をたたき歳より扱いをするなと怒り掛けた土影の腰を鈍い音が走り抜けた。
「ヌオオオオ」
「……ああ、オレが行くから」
「うるさい、ワシが行くと言ったら行くんだ!」
円卓に両手をつき脂汗を浮かべたオオノキに眉間を寄せナマエが勝手に仕込んだポーチから湿布を取り出しオオノキへと流したのだった。


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