宝石とさよなら | ナノ


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「クソ、あいつ我愛羅のこと若造若造って…!」
「事実だ。それよりどうする?うちはマダラの名を出せば士気は下がる」
オオノキが護衛を伴い飛んで行った空を荒れるテマリが睨みつけ続ける。
元より言い返すタイプでも気にするタイプでもなかったが、他人が代わりに怒っているとより冷静になれるんだなとテマリを一瞥し、組んだ指の上に顎を乗せたまま話を戻そうとする。
やる気があるかは大きいぞと問題を提起する我愛羅に水影は足を組み替え「確かに由々しき問題だわ」と頷いた。

数で押そうが創設記を読めば読むほど無駄に思えてくる。
文字通り一騎当千の体術。木の葉の初代火影柱間と唯一張り合っていた実力者である。
錬度の差も向こうは幾度となく戦地を潜り抜けてきており比べるまでもなく大敗、長として一族を率いる頭もある。そこに九尾すら操る瞳術。
対してこちらの手札は数種類もなく確実に対抗できる術もない。
これを真面目に倒せというほうがイカれているのだ。
尾獣の力を借りたいほどなのに残る二匹がとられれば滅亡は確定。よって縛らなければならない。
消耗戦に持ち込むなど以ての外で、勝つには攻勢を続け奇跡を待つしかない状態で……。
こんな負け戦で「戦え」など言えるはずもない。言えるわけがない。

「我々は各里の代表だ。ゆえに一番己を、心を耐え忍ばさねばならん」
長が悲壮感を出せばすぐにその空気は波及し悪化する。
全力で同僚を、友を、恋人を。自国民を騙すしかないんだと綱手は続けた。
「未知数の敵を知り敵前逃亡しないとも限らないだろう」
「放っておけ、その腰抜けはどうせ死ぬ。戦わないと勝てないのをわかってない時点で生きることを放棄したと同義だ」
「だからと言って見捨てられるか!」
「下らないことで口論を始めるんじゃない」
「スリーマンセル。忍の基礎なのだろう?」

オオノキが飛び立ってから一言も口を出さなかったミフネが、見ていられないとばかりに間に割って入った。
だが本来ならこの場に出てくるはずのない……脈絡のない単語に理解が及ばず呆ける。
現在のアカデミーではどの里でも教える初歩であり基本であるその単語。
だから何だというのだ。誰がそう返したのか。それに柔和な顔を作ったミフネは言う。

「戦とは連携である」
この場の忍はその回答に皆怪訝な表情を崩すことはなかった。


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