宝石とさよなら | ナノ


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「マタン、それじゃあお先に」
「お前は多分あの中で一番弱いんだから気を付けろよ、次期族長」
「あっはっは、術持ってても使えないナマエよりは戦えると思うよ」
マタンの心配をケラケラと笑いとばすチクマに本気で心配しているんだがと額に手をやる。
ただでさえ戦闘能力が皆無な奴らが集まっているのにマダラが奇襲をかけてきた目的のナマエとサソリも一緒なのだ。
次期族長として詰め込まれた知識の抱え落ちも困るしチクマの通信術が使えなくなるのも砂にとって痛手なのだ。
木の葉のように山中一族がいれば離れたところまで通信機器がなくても念を飛ばせるがそんな人間は砂にこれしかいない。
マタンの溜息に反応し、まあ気を付けますよとひらひら手を振りながら返したチクマを今一度呼び止める。忘れるところだった。

「これをナマエかサソリに。できればナマエのほうが良いけど出会ったほうに渡してくれて構わない、どうせあいつらは一緒に動くはずだ」
「お?医療忍術のメモ……?」
「簡単な医療忍術とナマエの身体を使った複製術について書いておいた。使う暇があるかはわからないが実用性はあるはずだ」
急所を突かれたりしなければ一般人よりは死ににくいとはいえ限度を知っておかないと倒れたところで潰されるのがオチだからな。
医療忍術自体はナマエが使えることはないだろうがサソリならできなくもないだろう。
バラして人傀儡を作っていたようなやつだから人体には詳しいし集中力もあるしなと長い言い訳を述べるマタンを止め、随分と優しいじゃないと揶揄う。
「サソリは一度里を捨てようが外道だろうが自分の生徒だったし、ナマエに関しちゃ羅砂と彼女の身体に対して行ったことへの罪悪感だ」
あと我愛羅に対しても……だな。我愛羅が拗らせたのは俺たちの世代のせいだ。

「ああ、そういえばマタン戦争真っ只中の世代だったっけ?」
「たった今までしゃべっていた友人の頭が刎ね飛ばされる、それが戦争だからね。最善は尽くしておきたい」
「いつになく感傷的だねマタン。まあ……、これはきっちり届けておくよ」
それじゃあ雲隠れで。チクマは手製の革表紙の手帳を懐にしまい後ろ手にしばしの別れを告げた。


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