宝石とさよなら | ナノ


▼ 523



まだぎこちないものの泣いたことで多少荷物を下ろせたのか我愛羅は赤く腫らした目を冷水で冷やしながら荷物の整理を始めていた。
やはり一番最後に起きてきたナマエはあくびを噛み殺しながら我愛羅と場所を変わってもらう。
昨晩雪が降ったからか氷のような冷たさに一瞬固まったが持ってきたタオルでそれを拭うと再び我愛羅へと交代する。
「我愛羅君たちはすぐに帰る?」
サソリが鉄の国で買い付けておきたいものがあるらしいからもう少し残りたいんだけどと言えば、仕込みかと問い返された。
多分そうだとナマエがその言葉に返す前に外で話を聞いていたらしいサソリが答え中へと入ってきた。
「狭い」
「狭い」
「もう心配いらねぇぞ我愛羅はいつも通りだ」
振り返り外へ向かって叫んだサソリの声に良かったと二人の声が返ってきた。
心配しすぎて身動きの取れなくなった姉兄の代わりにサソリは様子を見に来たのだと知った我愛羅は俯き少し照れながらありがとうとこぼしたが、声は小さく誰の耳にも入ることはなかった。

「それで、だ。仕込みを選ぶのにオレはカンクロウを連れてきたいと思ってる」
カンクロウは弟子ではあるが傀儡師で専門だしなかなか柔軟な考え方をしているからな、ナマエよりははるかに役に立つがお前の方の戦力が減る。
さらにお荷物を抱えるとなるとオレが上からお小言を言われかねない。
「だから少しお前らの時間も欲しいというか、ついてきて欲しいんだが」
「くっそ…、言いたい放題言いやがって覚えてろよおっさん」
「……、まああとは帰るだけだから構わない」
「あっそう、じゃあそういうことで頼むわ」
噛み付いたナマエをスルーし我愛羅のみを見つめ相談をもちかけるサソリから一度視線を外して彼女を見、事実だから言い返せないらしく悔しがるナマエに思わず零した笑みを密やかに回収すると我愛羅はそれに頷いたのだった。



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