宝石とさよなら | ナノ


▼ 522



「おかえり」
「ただいまー、布団敷いてくれてありがとう」
頭の上にいくばくか雪を積んでいたナマエが我愛羅を自身のコートに半分しまいながら帰ってきた。
どういう状況じゃんとテマリと顔を見合わせたオレの隣で端に寄せた座卓にて足を外し関節の軋みを治していたサソリがナマエに指さし頭のそれを払って来いと声をかける。
「お?おお…」
気づかなかったといわんばかりの驚き方をし脱ぎかけた履物をしまう前にその床へと積もっていたそれを落とす。
濡れた床はすぐに取り込み仲間を作ると浸食範囲を広げていく。
すっかり大人しくなった我愛羅の頭もはたいてから暖かい部屋の大気に肌を触れさせた。

「いやぁしかし雪なんてこっちに来る時以来だよ」
あの日は降ってはいなかったけど積もってはいたとぼんやり遠い昔のことの様に思い出す。
同僚の男なんて天気予報でホワイトクリスマスになるかもと言っていたのを見て彼女のために高級レストランを予約していた。
同時に部長の君はクリスマスにコレかな?と親指を立ててにやけ、セクハラ発言を働いていたのを思い出してしまったが今ではいい思い出となってしまった。
帰りたいが、戦争が確定した今私は我愛羅君たちを置いてはいけない。
あれだけ帰りたいと口うるさく言ってしまったくせに良い偽善だった。
手段が見つかってもおそらく私はこの戦争が終わるまでは残るのだろう。

……まぁ、そう簡単に手段が見つかるとは思わないからその辺は心配しなくても大丈夫だろう。
時空間忍術が使えないらしいし戦闘経験は皆無に近いからマタンさんかサソリの横で負傷者の手当てに回るんだろうが彼らのために精いっぱいのことをしようと同じ布団に当然の様に侵入してきた我愛羅君へ腕を回してやる。
5つ敷いてもらったのにごめんよテマリちゃんたち……。



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