宝石とさよなら | ナノ


▼ 521



成長しても我愛羅君は我愛羅君のまま。他人の前では涙を見せることのない彼は今こうして私の袖を濡らしている。
自分からは一切聞かずに彼がしゃべってくれるのを待っていれば鼻をすすりながら絶交してきたのだとぽつりぽつりと語りだした。
収まりが悪かったのか身動ぎをして向かい合う形にすると我愛羅君はそのまま持たれるように肩に額を付けてきたため金具やボタンは痛かろうと前を開けたままだったコートを開き包み込む。
子供のころならすっぽりとおさまっただろうがすでに私より幾何か高く、肩幅も広くなった彼の背中にまで生地は回らず。
寒風で揺れるコートを抱きしめるような形で腕を使い留めるとずびずびと濡れた音をさせている赤毛に頬を摺り寄せあやすように叩いてやる。

風影として、そして友として最終的にナルト君を守るためにうちはサスケを捨てる様に言ったのだという。
何事にも模範解答があるが、必ずしもそれは正解ではないのだと、口にしてしまった後で気づいて後悔をする我愛羅君に静かに相槌を打つ。
私も、彼の言葉は間違いではないと、政界に限りなく近いものだと理解しているのだ。
ただ、ナルト君の友をあきらめきれない考えも判らなくもなかった。
私で変換するならあちらの世界を捨てろと言ったに他ならない。考え抜いて我愛羅君が友人を守るために出した答えを彼も本当は理解しているはずなのだ。

「謝ろう、大丈夫だよ」
たとえ顔を見せないと約束してしまっても、手紙だってなんだって出来る。手段はこんなにたくさんあるのだ。
彼が優しくて強い男だというのを一番よく知っているのは我愛羅君なんだからと呟いたナマエの言葉が雪に浸透してとけた。


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