宝石とさよなら | ナノ


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あちらさんはサソリが物を食べれないと知らない事をすっかり忘却していたナマエは目の前に広がった鉄の国の特産品を多々に含んだ料理に顔をしかめた。
「サソリ、養分抽出機器は」
「持ってるわけないだろ、余分に栄養剤持ってきてるし」
「ですよねー」
国賓としてきている私たちに下手なものを出せないとでも思ったのか豪勢な和食は運ばれてきたその時からいたずらに鼻孔を擽ってきていた。
冷めてしまうのはもったいないが流石に私もこの量を食べきれそうにない。
だからと言って残してしまうのは心が痛い。どうしようかと悩む私たちのちょうど後ろで引き戸が音を立てた。
追加の料理かと身構えた私たちの目に飛び込んできたのはいつもの姉弟で。思わずナイスタイミングだと指を鳴らした私に正面からもたれかかるように抱き着いてきた我愛羅君に何事かと後ろに控えていたお姉ちゃんとお兄ちゃんを見やる。
二人が顔を見合わせそれからふいと地面に視線を落としたのを見て何かあったんだなぁと悟りながら我愛羅君の背中に手を回しぽんぽんとリズムよく叩いてやる。
冷えた身体は服を着ていてもわかってしまうほどで、目を見開いた私が我愛羅君の背中をさすって温めるが廊下と近いこの場でそんなことをしても気休めにしかならないとまず三人を中へ引きいれた。

風影たちが帰ってきたのをスタッフの誰かが伝えたのかすぐに追加で料理が運ばれてきた為それをテマリちゃんが受け取り座卓に並べていく。
その間もだんまりを決め込んでいる我愛羅君を隣で宥めすかしていれば、向かいで自身の食糧を巻物から召喚させながらカンクロウ君にこっそりと尋ねているサソリと目が合う。
耳打ちされたまに頷いているサソリに首をかしげていればぎゅうと子供のころの様に服の裾を握られ我愛羅君の方を向いた。
相変わらず無言のままでこちらを見ようともしない我愛羅君だったがしわになるほど強く握られた服を放してもらえるようにと指を一本一本やんわり外していく。
掴むものがなくなった我愛羅君の指が求める様に丸められたため、巻き込まれた片手を放置して、食べ終わったら廊下に置いておいてくださいと告げて出て行った女中さんをこんな深夜までやらせて申し訳ないと心の中で謝りながら見送った。

「とりあえずご飯にしよ」
「……待たせて悪かったよナマエ」
我愛羅君の方をちらりと視界に入れてからそう告げたテマリちゃんに私たちもいろいろお話してたからと眉を下げて笑った。



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