宝石とさよなら | ナノ


▼ 519



もそもそと器用に遅い夕食を終えた我愛羅君は寝間着に着替えた後一人どこかへと去って行ってしまった。
追いかけるべきかと思案する私の肩を掴むとテマリちゃんはそのうち帰ってくるからと首を振る。
「今は一人にさせてやってくれ」
「……わかった、聞いてもいいよね?」
「うずまきナルトとな、喧嘩をしたんだよ」
「まさか!」

だってあの我愛羅君だよと笑うが自分のそばにいたはずのサソリですら閉口している。おそらく先ほどの場でそれとなくカンクロウ君から聞いていたのだろう。
普段なら茶化して終わりであるはずのサソリですら空気を読み声を発しようとしなかった。
皆の反応でそれが真実であることを理解したナマエは開いた口を徐々に閉め彼が出て行った方へと顔を向ける。
二人しかいない親友の片方を失ったのだ、きっとそれは途方もなく歪に我愛羅君を変えてしまいかねないもので……。

「やっぱり追いかけるよ、我愛羅君上着すらもっていかなかったみたいだし」
あちらの世界から持ってきた珍しい形のコートを羽織り、追いかけていったナマエを再び止める者はもういなかった。

「やっぱり追いかけてったな」
サソリが静かに閉められた戸を見て呆れつつ口にする。
頬杖をついた赤毛の男を見、わかっていたことじゃないかとテマリも笑う。止めなかったわけじゃない、止められなかったのだ。
我愛羅の人柱力時代のトラウマからまだ抜け切れていない二人は夜になると暴走していた我愛羅を思い出し動けなかったのである。
守鶴が抜かれたとはいえ父親と同じ地遁を使う我愛羅に対抗できうる人物などこの場にいない。忍として生きるために培ってきた生存本能に従ったまでだ。
彼女にはそれがないから、きっと四肢を潰されようが笑って近寄っていけるのだ。
「大丈夫じゃん、ナマエなら我愛羅を……」
連れてここまで何事もなく戻ってくる……、と、カンクロウは願望染みた言葉を口にした。



_



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -