宝石とさよなら | ナノ


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怯えたようなナマエの瞳に加虐心が揺さぶられたような気はしたが、隠密行動中なのだから荒事は避けねばと実験体への嘲笑をやめ平常の声色を絞り出す。
数か月前に拉致したことを覚えていたようで、志村ダンゾウ……と震え口にするミョウジナマエはちらりと視線を周囲に向ける。
逃走経路を探っているのだろうがそうはいかない。フーが先を行っていたトルネを連れて帰り、ナマエを挟みこんで相対する。
流石にここまでされれば逃げられないことを理解したのか何ですかと実験体は震え尋ねた。

「なに、少し話をしたくてな」
会談の場から逃げてきた手前、他国で問題が起これば木の葉の性にされるのは必至である。
ただ、それも表に出なければ良い。本人が話をしなければ問題ないのだ。
幸い自分には長年研究してきて者にした封印術がある。血まみれになろうがこの実験体は生命力だけは強い。
多少舌に墨を入れた程度でショック死もないだろうしいざとなればこれを使えばいい。
……まあ、風影が溺愛しているらしいから姿が見えなくなるよりは密約を交わして戻した方が賢明だろう。
木の葉崩しでようやくこちら有利な条件を結べているのだ。わざわざ崩すような無粋な真似はしまい。

「まあ、こちらも無理に連れ去る気はないがな」
「この状況を作っておいてその言葉ですか?理解ができないですね。……あえて聞きますが拒否権は」
「まさか口にしないとわからんでもなかろう?トルネ、人気のない場所まで先導の後人払いを。フーは引き続き感知を頼んだぞ」
返事と同時に瞬身で消えたトルネが左腕の肌を露出させ監視の侍たちを消している方へ、自分を奮い立てるために科少々強気で出たナマエを先にし気配を殺しながらゆったりと進んでいった。


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