宝石とさよなら | ナノ


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「我愛羅、お前以上の絶対防御。第三の力、……須佐能乎だ」
やにわに比較され、我愛羅の指がぴくりと小さく反応した。
幼少期から絶対防御と畏怖されつつ自身に使われ続けてきた言葉を横取りされ気分が害したのか、はたまたプライドに触発したのか。初対面であろうと不機嫌になったのは見て取れるほどだった。
眉があれば思いっきりしかめられていたに違いない我愛羅の表情に満足げにサスケが繰り返す。ああ残念だったな。もうお前に負けることはない、と。
面倒なこと言い出したじゃんよとテマリをチラ見し目で語るカンクロウに同意しつつサソリに押さえつけられおとなしくしているはずのナマエへとカンクロウからの視線をパスする様に流す。
上では先ほどまでのしかかっていたヒルコをしまいしゃがみこんで傍観していたし、一応ナマエもおとなしく動かずにいるのだが……。ナマエは絶対防御って何?だなんてかなり声量を絞ってサソリへ尋ねていた。
気を使ってその声量らしいがこっちからしてみればだだ漏れもいいところだ。忍の聴力をなめないでほしい。
天然というかなんというか。サソリが戦闘が止まってるし多分あいつらにも聞こえてるぞと教えたらしく慌ててこちらを交互に見だしたナマエに怒気を滲ませていた我愛羅の雰囲気が和らいだ。
「なにやってるじゃんあいつら……」
カンクロウが突っ込みに転職を始め、ダルイとか言う男が閉まらない空気に頭を掻いたその時だった。

「ダルイと砂の衆、いったん下がれ!」
シーの焦慮した叫びが空間に響いた。
じわじわと、気づかないよう少しずつその巨体を肥大化させていた須佐能乎が、不意を突くように一気に膨れ上がると同じように巨大化した太刀を持つ腕を大きく後ろへ反らした。
一瞬その動きが止まったかと思いきや、その巨体から出るとは到底思えない速さで柱を二本三本と薙いでいく。
すんでのところで対応し後ろに下がったはいいが、巨大なホールの天井を支えていた柱がなくなったことで比重に耐えきれなくなったそれが基礎を破壊し雪崩のように倒壊を始めた。


下にいる姉と兄の盾に砂が必要だった。
サソリもナマエも今にも自分たちを押しつぶそうと真上から降ってきた巨大な瓦礫に対応できる術はなかった。
駆け寄ろうにも高低差があり砂が必要だった。
ならば砂だけを飛ばそうにも両方を守れるほどの量はなかった。
上にいるナマエたちを庇うまでの時間もなかった。瓢箪の中に残っていた砂も自動的に我愛羅を、その近くの者を守る体制に入ってしまった。

破損した手足は複製して修復できても心臓そのものがつぶれたらナマエだって換えはきかないのだ。
「ナマエ!ナマエッ…!」
目の前で大切な人が潰れていくデジャヴ。甦るトラウマに我愛羅はあの日と同じように叫んだ。


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