宝石とさよなら | ナノ


▼ 406



なぜこうなった。ナマエの後ろでニヤニヤと挑発的な笑みをぶつけてくるサソリに我愛羅は頭を抱えた。

時は数十分程前に戻る。
回転草にて時間的にも夕飯をかっ食らい、ナマエが大好物である発泡酒まで手を出したまでは良かった。
予選会場でひっそりと話していたようにナマエが工房からこちらに帰ってくるのが解っていたからこそ止めなかったのだ。
介抱するのもまた一興だと段々赤ら顔になっていく彼女を微笑ましく思って自身の前に置かれた発泡酒を胃に落とす。
麦の苦みが喉を通り、回転草こだわりののど越しを感じながら絡み酒を始めたナマエのちょっと怠い応対を楽しんでいたのだ。
そもそも食事を出来ることが不思議だったんだが流石に酔うことはないらしいサソリがこちらに寄り掛かるナマエと自分を横目で交互に見ているまでは良かった。実に愉悦だった。
酔っぱらい最近の怒涛の出来事を忘れようとするかのごとくテマリと一気飲み勝負を始めたナマエをはさみ牽制し合う。
ああ残念だったな、今日からナマエは帰宅するんでと視線に乗せ笑っていたのが悪かったのだ。

「空いてる〜部屋をぉ使えばいいんじゃないかなぁ〜!」
何とか聞き取りできる程度の滑舌でふにゃりというかふんにゃりと口にするナマエの両頬を引っ張る。
「何で、あいつを、呼んだんだっ!」
「我愛羅君こっわーい、にゃはは!」
問いかけに対し帰ってきた言葉は見当違いにも程がある。アルコールでストレスも賢さもいっしょくたに吹っ飛んでいったナマエが笑い肩をバンバン叩いている。
力が強くない為痛くはないが今日の酔っぱらったナマエは中々酷い有様である。
赤砂の天才傀儡造形師と呼ばれた外見年齢同年代の中身はおっさんが「怖いなら一緒に寝てやってもいいぞ?」と明らかにセクハラまがいの絡み方をしているが今のナマエに自衛の二文字はないため間に自分が間に入りとめるしかない。
酔っぱらう前にそこも決めておけばよかったと考えても後の祭りである。連れてきてしまったものは仕方ないし多分監視役も出来て一石二鳥ラッキーとしか考えていないはずだこの酔っぱらいは。
「オレはお前に聞いちゃいないんだがな?」
「煩い、ナマエもう今日は寝ろ。明日に響くだろう」
「我愛羅君お母さんみたいだねー」
口元に手を当て金髪の方の友人のようににひひと声を漏らし笑うナマエを自室へ追いやり一つ溜息をついてから残されたサソリと対峙する。
問題は山積みだが、一番の懸念はこの男である。
「睡眠はその体に必要ないんだろう?」
少し顔を貸せと、好戦的な砂の忍らしい瞳と交わせば、「ああオレもちょうどテメェと同じことを考えていたぜ」と半目をかっぴらいたサソリはリビングのソファーに腰かけると踏ん反り返って足を組み、自宅のように寛ぎだした。


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