宝石とさよなら | ナノ


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「おいこれ美味いぞ」
これが漫画ならばひょいひょいと擬声語を吹き出しで描かれそうなほど頻繁に隣から取り皿の上に置かれる料理をナマエは文句も言わずにおいしい、おいしいと口に運ぶ。
心の中では味覚ないんじゃなかったのかと突っ込みつつも一瞬でそれすら霧散するほどの絶品さにそのうち砂の定食屋をはしごすることを心に決めた。
サソリがあまりにもナマエに構うために反対側にいた我愛羅が負けじとナマエへいつもの“毒味”をさせる。
恥ずかしがっていたそれすらも気にしないほど自然に口を開けるナマエにそれはもう鳥の親子のように料理を放っていく我愛羅がサソリへライバル心むき出しの翡翠を向けた。
ただ今日はその瞳の色が一段と濃く碧い。どちらかというとトルコ石色のそれに一対のジルコンが対抗するように睨み付けた。

「怖ぇじゃん……」
カンクロウはベクトルは違うものの砂の最強組と言っても過言ではない赤髪二人とその間に挟まりつつも平然と料理に手を伸ばしているナマエの図太さにそう感想を零した。
それに同意し首を縦に振ったのは保護者変わりでもあり堅物の常識人でもあったバキとテッカンだけである。
愉快犯のチクマとマタンは嫉妬に燃え毛を逆立てているシュデンに含み笑いを向けているし、テマリは末弟を全面的に応援している為カンクロウの言葉は鼻から耳に入っていなかった。
まあそれを言うなら料理に舌鼓を打ちつつナマエと楽しく料理の感想を論議し合っているオイラクもまた図太いと言えるだろうが……、挟まれている分ナマエの方が優勢である。
いやそういう話じゃないがと自分でつっこんだカンクロウの隣でバキがテッカンに語りかけた。
「チクマの言っていた通りだったな」
「ナマエの誑し込み具合の話か」
「ああ、サソリを里に引き入れるのを反対したんだが……杞憂だったみたいだ」
自分と一歳違いの、しかも年上のサソリがデレてるのを見るのはなかなかに苦いものがあるがと評したバキにテッカンも口元を引き攣らせながら料理へと視線を戻した。
テッカンとマタンはサソリの里抜け前の状態をよく知っているのだ。若干微笑ましげに見ているこの中で最年長のマタンは特に、サソリとも、チヨバア様ともつながりも大きかったから感慨深いのだろう。
感情を出してくれて嬉しいと零したマタンにそうだなと、かつてサソリのチームメンバーだったテッカンが頷いたのだった。


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