宝石とさよなら | ナノ


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一度ならず二度までも泣き顔を見られてしまい、さらに男の柄じゃないだろうに慰められ流石に正気に戻ったというか落ち着いた私は情けなさと申し訳なさで洗濯しながら眉間に寄ったしわを揉み解していた。
先ほど汚したんだからてめぇが洗えと言われ顔面に投げつけられたインナーを窓枠に掛け荷物の整理を終えベッドに寝転がった。

大体このおっさんが人形になりたかっただとか言うくせにそれなりにチヨ様の事を大切にしていたのが悪いのだ。
本当にどうでも良かったらばあんなに詳細に覚えているはずがなかった。
もう土葬も終えたしチヨ様は写真嫌いだったからエビゾウ様が出してくれた若いころの写真位しか手元にはない。
日数がたつにつれ段々とぼやけて霞がかっていた恩師の顔を鮮明に思い出させるほどの面相筆を巧みに使った絵だったのだ。

カンクロウ君も絵が上手かったが年数の差だろうか、彼もまたこの男のように芸術的な面に秀でてくるのだろう。
テマリちゃんは大雑把に見えて後輩の面倒を見るのがとてもうまいし我愛羅君は貯蔵チャクラ量を駆使して高威力広範囲の術を使うがアレでいてなかなかに頭脳派だった。
これからの成長が楽しみだと一人頷いたところでふと我に返る。私に禁術を仕掛けた張本人とそれを知っていながら黙っていた共犯者たちに私は怒っていたはずである何のんきに将来を楽しみにしてんだ。
短期間で立ち直れたのも若干余裕が生まれたのもサソリの「ババアの作った術の亜種ならこの工房で解除する術でも研究すればいいじゃねえか」の一言のおかげなのだが中忍試験が始まろうとしたときに決めたはずなのだ。
思い出した、三人が謝るまでは態度を崩さんと再度心に決めると今のうちに塔内を見回っておこうとポーチに必要な物を詰めて立ち上がった。口にすれば甘すぎると傀儡から呆れを飛ばされるだろうが気持ちに余裕があるからこその甘さなのだ。

ナマエがぐだぐだぐずぐずと衝動的に泣きついてしまったことへの言い訳を脳内で繰り返し話がずれだしたころ、サソリはとっくに自分の研究へと戻っていた。
採取した毒を調合しては背中から生やした三本目の妙に長い腕でそれをメモしているのだが、この三本目の腕はチヨ様のコレクションのパーツを勝手に拝借している。
「オレの物はオレの物だがババアの遺物もオレの物」と当然のように言い切ったサソリにとんだジャイアニストでだと出発するときには呆れたものであるがこう見ていると確かに便利そうではあった。
傀儡の身体になるメリットは必要に応じて体の形状を変えられることだろうか。まあそれもサソリの腕があるからこそだが。チヨ様ですら圧倒する数の傀儡を同時に嗾けてきた天才の名は伊達じゃないのだ。
「さて、洗濯も終わったので私はちょっと塔内を見て回るけどおっさんどうする?」
「今回の受験者にヤバそうなヤツはいなかったが仕事だ、ついてくぜ。今後の交渉の為に」
「あら心強い。……思ったんだけど師匠をラブドールにするって相当失礼だよね、いやまあ用途は傀儡と同じなんだけど」
はたと気づいたナマエが弟子としては罪悪感すごいわと微妙そうな顔を向ければ換えのインナーを着て顔布を巻着始めたサソリが「リアル志向のフィギュアだったか?あれだと思っておけばいいじゃねえか」と鼻で笑う。
一瞬後に「まあ時代から予測すれば色の経験も多々あるだろうし良いだろ」とひらひらと手の平を泳がせたサソリに思いっきりため息を吐いてやった。
おっさんのY談まじで困る。


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