宝石とさよなら | ナノ


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「……案外怒ってたのな」
追い立てるように彼らを工房から出したナマエに後からサソリが声をかければナマエはそりゃあねと短く肯定する。
「そりゃあね、大人げないとは思ったけど」
いやぁ久々にやってしまったと眉を下げるナマエが弁明するように続ける。
あれに帰れと言われて流石に我慢の限界だったらしい。帰れる手段を向こうが断ち切ったのになんて理不尽なんだと吐き捨てるナマエ。
というかその女の言葉が無ければ怒る気配はなかったしまさか我慢する気だったのかコイツは。
ああなんて……。

「馬鹿だな」
この里で我慢し主張をしないことがどれだけ悪循環させることになるのかわかっていないのだ。
自分自身で立場を悪くしていった女の末路がこれなのに、それが解ってからも直す気はさらさらないらしい。
そんなナマエに再度馬鹿だと罵倒を投げつけてやるが女はそれを気にも留めていないらしくこちらに振り向いた後若干ばらけていた書類を整理し棚の上に置くと口を開いた。

他人の身体だと思って図とその申し出を拒否してきたが、一生ここで飼い殺す予定だったのだ。そもそも死んでいる人間の身体慣れ度所有権は私にある。
「条件を呑むわ、だから手伝ってくれないかなサソリ」
私が元の世界に帰る方法を調べるのを。
明確な目的の見つかった双眸はまっすぐとこちらを射抜いたのだった。


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