宝石とさよなら | ナノ


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「オレからすれば夜叉丸を除いて一番普通に接していたのは親父だと思ってたのに」
まさか失敗作だとまで称していたなんてと戸惑いを隠しきれないカンクロウの背を私はリズム良く叩き慰める。
解らなくもない。子供視点だと物事を多く見れないし自分の親が子を差別してるだなんて思わないもんね。
私もいろいろ勘違いした覚えあるからなぁと脳裏に並びだした苦い思い出を払拭させるとナマエは「まあ、羅砂さんも我愛羅君の事嫌いだったわけじゃなさそうだから…」と擁護すれば今度は我愛羅君が目を丸くした。
「……それはないだろ」
「いやいや、我愛羅君が嫌いだったら私にストッパー役なんて頼まないでしょ」
最初はどう思ってたか知らないけど呼び出されて風影室に行った時、得体のしれない私へ自由に出歩いてもいいと条件を緩和した羅砂さんは実利主義が過ぎただけなのだと感じた。
まあ私はあまり相容れないんだけどね、“自分の子供を放置する親”と言う見方をしちゃうと……と羅砂さんを評価する。
自分ではなんとかできないと考えて私に頼んだんだと思うと語ればそうか…と我愛羅君も兄同様に黙ってしまった。

これは……教えを乞いづらい雰囲気になってしまった……。
この空気のままカンクロウ君を帰すのもちょっと唸ってしまうし気分を変えさせようとお茶を淹れるため火を点けた。
ふつふつと端の方が揺らぎだしてきた頃「……うん、まあたまには兄として教えてやるじゃん」とどうにか納得を付けたらしい兄が声を出した。
砂の忍なら一度は動かせるようになっとかなきゃな。動かすこと自体はコツがわかればすぐだし、親父が教えなかったんならオレが責任もって使えるようにしてやるよと眉を下げて笑っているカンクロウ君が自身の荷物から口寄せの巻物を二つ取り出す。
「ナマエー、どこ行ったじゃん?」
「台所ー!ちょっと待ってもうすぐお湯が沸くからぁ」
すぐに教えてくれるらしいので急いで急須と湯呑みを3つ用意し沸騰を待った。

「ごめんお待たせ、これお茶ね」
悪いじゃんとお盆の上で湯気を立てている湯呑みを傾けズズ……と啜ったカンクロウ君が、自身の膝の上に乗せていた相棒の烏をひょいと持ち上げた。
「……あれ、我愛羅君の見たことないんだけど持ってたっけ?特注品?」
「これはカンクロウの黒蟻だ」
「ナマエの奴は一つしかないしな。見てるだけよりやった方が覚えんの早いだろ?」
黒蟻は烏より仕込みがないから比較的安心できる、本当はもう一つ…山椒魚ってのもいるんだけどそいつは場所とるからこっちを貸したんだとお茶を運んでくるまでに用意を終えていた手際の良さに舌を巻いた。
流石兄弟のまとめ役である。やはり子供時代から思っていたけどかなりしっかりしてるんだなぁと感心し頷く私の耳に入ってきた「それに我愛羅なら多少仕込みが飛び出しても砂で対処できるし」と言う言葉に眉をひそめた。

「ちょっと待って、私今二人に馬鹿にされてる感じ?」
「いいや、からかってる感じ」
「そんな兄を傍観している感じ」
やだもー!そういうところだけタッグ組んでくるんだから。
昼間は喧嘩勃発しかけたものの、案外仲の良い兄弟に弄られ役になったナマエはカンクロウ君からチヨ様の傀儡を受け取り呻いた。


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