宝石とさよなら | ナノ


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「おい我愛羅忘れも…何その顔」
夜間の警備に駆り出されていったシュデンから代わりに届け物を受け取ったカンクロウが弟たちが帰宅したであろう離れへと足を運べば、リビングでソファーに腰かけたナマエと傍に立っていた我愛羅の2人の双眸がこちらに向いた。
すごいタイミングだわとぼそりと零したナマエに頷く我愛羅に手招きされとりあえず合鍵をポケットにしまい、後ろ手でリビングのドアも閉めた。
「おお?懐かしいモン持ってんじゃんナマエ」
何、ナマエ傀儡師でも目指してんの?と膝の中にある練習用傀儡を目ざとく見つけたカンクロウが少し興奮気味に食いつく。
自身も小さいころ姉といじくったなぁと背もたれの後ろからひょいとチャクラ糸を絡め持ち上げた。
カタカタと唸る傀儡を手にし、自分の時より小さく感じるのは気のせいだろうかとくるくると型番を探し宙に浮かせたカンクロウを凝視するナマエに気付いて一瞬びくつきながらなんだと問う。
「か、カンクロウ君超能力使いなの?念力?」
質問を質問で返したナマエに「いや、あれはチャクラ糸とかいう奴だ」と兄の代わりに答えた我愛羅にああうん…と吃りながら頷く。
そもそも何でナマエが傀儡を持っているのか、二人で弄繰り回していたようだがナマエが興味を持ったのかと尽きぬ疑問に静かに思考を巡らせる。
はえー、ほあーだののんきを体現したよくわからない感嘆詞を宙に放り投げたナマエがねえねえと呼び掛けカンクロウが注目したと同時に自身の顔の前で両手の平の肉を鳴らし合わせた。

「カンクロウ君お願い、暇なら傀儡の動かし方を教えてください!」
「あー、うん。仕事もう終わったし今からでもいいけど……」
何でいきなり?予測しようにも大体いつも近くにいる我愛羅の方に教えてもらった方がいいんじゃないのかという事が引っ掛かって通行止めを食らったため尋ねた方が早いと口にすればチヨバアからの課題だと答えた。

「手先の運動って渡されたんだけどね、私も我愛羅君も傀儡の動かし方わかんなくて……」
「え……、我愛羅習ってなかったのか?親父とか夜叉丸とかは?」
「それなりに玩具は持たされたが基本放置だったからな、傀儡は仕込みもあるし危ないと判断されていたんじゃないか?」
「私が来たときは離れにあったのなんてクマのぬいぐるみだけよ、流石に酷過ぎたから洋服とか節約して本とか買ったし」

砂の里では忍になるものはほぼ確実に持たされるものだったらしく、完全に想定外の事態に「ま、まじか」と零し狼狽えるカンクロウ。
その目の前で「ナマエ、節約していたのか」と詰め寄り目尻を吊り上げ眉間にしわを作った我愛羅の額を揉み解し、「もう終わったことだし私がしたかったから」とナマエは笑う。
「そもそも無一文でこっちの世界に来たし羅砂さんのお金なわけじゃん?」
一応取引として給与の形で受け取っていたが、自分が居なければ我愛羅へ行っていたお金である。
それでも納得しない我愛羅に「我愛羅君の笑顔がもらえたしおつりが出る位だ」とナマエが頬を引っ張ればしぶしぶながらもありがとうと素直なお礼を言葉に零した。
猛攻の止んだ我愛羅に、もう一度お願いをしようと放置していたカンクロウへとナマエが体を向けたが、いまだ父親の差別を信じられなかったカンクロウは狼狽えたままだった為先にお茶を入れて来るべきかと立ち上がった。


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