宝石とさよなら | ナノ


▼ 270



「待て、ナマエはまだこっちで業務を……」
眼前数センチのところにあるチクマの眼鏡のレンズが光り、対峙していた視線を遮った。
言葉を紡ぐことを得意とするチクマと口下手な我愛羅では試合前にすでに決着はついているも同然だったわけだが……。

「五代目が仕事の手を休めちゃって進まないんだからしょうがないじゃない」
「面目ない。私が突き放せば……」
「それはまた別の意味でめんどくさいことになるからやめて」
それこそ拗ねだしそうな気がすると我愛羅から視線を外し眉を寄せたチクマにナマエは流石に我愛羅君はそんなことしないよと手まで付けて否定した。
そんなナマエに便乗するように我愛羅は頷いたが、視線を明らかに右往左往させていると気付いたチクマは額を抱えため息をつく。
「まあ、こっちの仕事もほぼ終わったし異動が少し早まっただけだよ」
出来る部下を持って幸せだね我愛羅?
当初の約束を持ち出され、とうとう反論できなくなった我愛羅はチクマに引っ張られていくナマエに「よ、夜迎えに行くから……!」と悔しそうに約束を取り付けた。


「さて、まあ改めまして。今日から上司になるチクマです」
こっちの編みこんでる方がマジュでこっちのゴーグルがオウメイ。どっちも私が引き抜いてきた情報管理のプロよ。
何かあったら言うといいわと紹介するチクマちゃんの声に合わせ書類の間から顔をのぞかせた二人は人当りのいい笑みを浮かべこちらに頭を下げた。
職場はまあ日によってまちまちなんだけど最近はここね、幅を取るから基本空いてる場所を使うかな。あと私は里とは関係なく鷹と契約しているんだけど今飛ばしちゃってていないから紹介はまた今度。
雪崩れるような言葉にうまく反応できず、とりあえず頭だけ下げる。
こ、これがチクマちゃんの能力か。我愛羅君はまたすごいのを拾ってきたんだな……。
上層部を言い包めていたあの時はただの序の口だったわけか。
人が理解する前にボロボロと言葉を落とせるほど瞬発的な頭の回転を見せるチクマちゃんに連れられ彼女の定位置らしきところへと案内された。



_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -