宝石とさよなら | ナノ


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「……ナマエちゃん、君自傷癖あるでしょ」
「無いです」
きっぱりと言い切ったものの疑わしいものを見る目で手術台の上に寝かされている私へとじっとりした視線を注いでくれたマタンさんに再度「ないです」と力強く答えた。
確かに我愛羅君が小さかった時から怪我の回数は多いけど私だって痛いのは嫌だ。
ただ、便利なんだよねこの身体……。ちょっとの怪我じゃ死なないってわかってるし。解ってるからこそ無理をするんだけど。
……そういえば今回少し痛覚が戻った気がするんだけど気のせいかな?偶々ツボついただけだろうか、まあ考えてもわからないし気のせいだってことにしておこう。
って思ったらマタンさんが切り取ったとこと同じ所刺してるねぇと腹を開き実況をしてくれたために謎は解けてしまった。
新しく作られたところはまだ敏感なのか…覚えておこう……。

砂隠れの不利益になるから助けただけだったのだが、負傷者一名というか私が怪我したもののチクマちゃん達の願い通りの方向へとうまく事が運んでくれたらしい。
だがマタンさんから伝わったのか、何故か知っていたチクマちゃんが事後報告を入れたらしく飛んできた我愛羅君はものすごく怖かったけど。出来れば二度と見たくないあんな目の色が黄色く変わるほどキレてた我愛羅君は……。
チクマちゃんとマタンさんが必死に止めてたけど昔あの目の時に何かあったんだろうか。
どうにか大人しくなった我愛羅君に私諸共外出禁止令を出されたが、初日ならすぐ破っていただろう縛りにタンゲは従順になっているし口も悪さも鳴りを潜めた。
タンゲは謝ることを覚えたらしく、自分の我愛羅君に対する言葉への謝罪を述べたために驚いたのかそれだけですんだのだ。
まあ大名の方には息子直々に代金の増量の報が行ったと思うけど。壁壊した迷惑料分の。
そんなこんなで手術はまた一日ずれることになり、入院も一日伸びたわけだが大人しくロビーから借りてきた本を読んでいたところに近づいてきたのは我愛羅君ではなく、妙に大人しくなったタンゲだった。

「知ってるかナマエ、オレん家めっちゃ眺め良いんだぜ。来るだろ?」
「そりゃそうでしょねぇ…、まあ行かないけど」
「なんでだよ!」
口調は相変わらず上から目線だが忍に対し考えが変わったらしい。
自分の代わりに命を賭すと言う言葉が効いたのか知らないが、我愛羅君のことをバケモノと言うことも無くなり私もおばさんと言われなくなったし一件落着…とはいかないんだけども……。
「タンゲ、お前の態度が180度変わったとしてもナマエはやらん」
マタンさんの私室のドアが音を立てることすらなくいつの間にか私の背後へと現れた我愛羅が「オレのだからな」と私の頭に顎を乗せて勝ち誇ったような目でタンゲを見下ろしていた。


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