宝石とさよなら | ナノ


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柵を越え里内部へはいり追っ手を撒き、ナマエはタンゲを脇に抱えたまま人目のない路地へと駆けこんだ。
直ぐ近くにいなかったためか警備の忍にはばれなかったらしい。それもどうかと思うが通行書を持ってない私達にとっては都合がよかったので言及しないことにしたい。
警備の人たちも始末書を書かなくて済むだろうし、ただそれとなく警備の方に力を入れるように打診はしておくけど……。
今頃痛み出した腹の傷にタンゲを投げ出し蹲るとそのまま地面に膝をついた。
抱えた時点ですでに傷を負っているのに気づいていたタンゲがビビりつつも頬を砂で汚したまま駆け寄ってきた。
「タンゲ、ちょいこっちに来なさい」
蹲ったまま弱弱しく手を拱くとナマエの腹へと視線を注ぎながらナマエと同じ高さへと顔をやる為しゃがみこんだ。
ばしんと思いっきり頬肉を打たれたタンゲが後ろに尻もちをつき目を見開く。
いつもなら無礼なと口にしていたがナマエが自分を罵ったと思えば助けたりと何をしたいのかわからなくて黙り込んだままだった。

「自分の事を要人だと言い切るならそれなりの行動をしなさい」
今のタンゲはただの我が儘なだけだ。解るわね?そう言ってタンゲの頬をぶった腕を頭の上に持っていった。
もう一発殴られると目を瞑ったタンゲの短い髪の毛を抑えるように置いた手の平で優しく頭を撫ぜる。
「要人の警備の為にアンタが貶している忍たちが命を懸けてるの」
生きるために命を懸けてるの、笑っちゃうでしょ。でも私はあの子たちの様に力はないから次はアンタを守ることは出来ない。
突き放すようなナマエの言葉にタンゲは落としていた視線をあげた。まっすぐに自分を見るナマエの目には強い意志がともっていて、それが感じ取れてしまったタンゲは歯をかみしめた。

同じように放任され育ったはずの我愛羅君と違うのは羅砂さんがきちんと躾をしていたからだろう。
我愛羅君が人の事を考えられる性格だったのかもしれないが、教育はやはり子供の性格を形成するにあたって最重要なはずだ。
「親も誰も教えてくれないなら私が教えてあげるから……」
ただの馬鹿にはなるんじゃない、良いわね。
タンゲの頭を撫でていた手に少し力を入れ立ち上がる。前傾姿勢になったナマエは揺れる身体に響いた痛みに自傷せずとも術を使用できなければとマタンさんに縫合してもらった後に今度こそ居場所を聞こうと自分に誓った。
腹の痛みがやばいからと疑問文にしておきながら返事を待たず病院への道をゆっくり進み始めたナマエにタンゲは撫でられた頭を押さえ静かに後ろをついて行った。



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