宝石とさよなら | ナノ


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「なんで…我愛羅には……」
我愛羅には父さんの送った忍から守るために取引したじゃないか。どうしてオレには…?
理解できないのか困惑の色も浮かべているタンゲに「うちの子バケモノ呼ばわりしたり私の大切な人達を貶したりした奴らを助ける義理なんてあるの?」と目を細める。
馬鹿じゃないだろうか。歩み寄ろうともせず一方的に貶していた貴方に誰が味方になってくれるって言うの?身分も金も、貴方たちのそれは恐怖でしばりつけているだけよ。
そもそも私忍じゃないし身分なんて知らないって言ってるわよねと冷たい視線を投げたナマエにタンゲは唇をかみしめた。
手と壁を見るにその怪我、自分でやったんでしょ。全て自業自得じゃない。最初から歩み寄ってれば少しは違ったのにね。
権力者側の堕ちた表情にいじめのそれを思い浮かべたが、イメージを振り払う為鼻で笑うと中央へと道を開けてもらいタンゲの前にしゃがみこんだ。
さて、どうする?踏みつけられたタンゲの顔に冷たい視線をやる。鼻声の中で一つずつ言葉になっていき、少しは理解出来たのかごめんなさいとここへきて初めて謝罪の言葉が出た彼の頭から足をどかしてもらった。
殴りぬこうと思いっきり拳を振り上げ縮こまったタンゲを目に入れながら、ナマエは中央に入ってくる前に拾っておいたタンゲの血の付いた針を一本腹へと突き立てた。

衝撃に耐えようと目を瞑っていたタンゲが襟首に引っ張られたかと思ったら自身の身体が宙へと浮いていることに気付き悲鳴を上げた。
そんな少年に構わず、ナマエは「里の中に走れ」と叫び地面に手を付けた。
自分達と一緒になってタンゲへの制裁を加えようとしていた女の突飛な行動に呆気にとられていた彼らの足元を崩すとナマエも腹から血を流したまま走り出した。
言いつけ通り足を縺れさせながらもちゃんと先を駆けていたタンゲに追いつくとさらにその襟首をつかみ加速する。
「ナマエ、お前血が……」
「黙れよクソガキ」
あとを追いかけだした彼らを撒くためとうとうタンゲを脇に抱えたナマエは忍の目でタンゲを睨み、視線を降ろした。


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