宝石とさよなら | ナノ


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「だ、だめだ…。リー君、努力…してもっ、足早く、ならない…ですっ…」
手術したばかりだからというのもあるだろうが、元々運動不足な現代人だった私が追いつくことはやはりなかった。
持久力はマラソンとかを日課にしてれば多少マシになるが足の速さは才能だよと木の葉にいる間一緒に身体を鍛え励ましてくれたリー君へとギブアップを唱えた。
外れにある家との間に入っていったのまでは目で追えていたがとうとう見えなくなってしまった為、諦めて立ち止まる。
笑う膝を抑え汗を腕で拭うとナマエは砂漠の日差し空避けるように一面茶色で出来た家の陰へと逃げ込んだ。

てかあの子牛車で来るわ歩くのは遅いわで会社だったらクビにされそうなマイペースさだったのにまさか過ぎでしょ、全然動けるじゃないの普段からもっと早く動きなさいよ……。
あの襲撃で負傷した忍の手術の為コンディションを整えておけとお茶汲み係すら外されている今のうちなのだ。
少ない時間で少しでも戦力になっておきたくてエビゾウさんを探してるのだがとんだ自己中の世話を任されてしまった。まあ確かに忍だったら彼の言いぐさには頭に来るだろうけど、忍でなくても頭に来たし。
大体お付きの忍を置いてくとか言っていたはずだがなんで止めなかった、お前は仕事だろ。ちゃんとしてくれ私じゃ手に負えん。
考えれば考えるほど文句しか出て来なくて不毛過ぎるため一度気持ちをリセットさせようと深呼吸をした。ああ喉かわいた。
病室で大人しくしていてくれと言った筈なんだが10代前半だからと言って大人しくしてるわけなかったもんな、とんだ失態だわ。
どうにもムカつく奴だけど一応要人だし世話係頼まれたしな……。今日はエビゾウさん探し終わりにしよう。
寄り掛かっていた壁から力なく立ち上がると、へろへろのまま逃げて行った方向へと太陽の下駆けだした。


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