宝石とさよなら | ナノ


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この女、ガチ切れである。
タンゲはいつも通りの振る舞い方をしていたら目の笑っていない女が出来上がっていたことに驚いた。
どんな振る舞いをしてもいつもなら頭を下げる奴らしかいなかった自分にはやけに新鮮に見えたナマエとかいうおばさん。
一晩かけてまだぎこちない動きではあるものの形は元通りになった腕を机の下で擦り、目の前の生意気なおばさんの頭をどうやって下げさせようか思案する。
今はチラつかせられる金は無いし、どうやらこの女には権威も効かないらしい。久々の難度に燃えだした自分がいるのにも驚いていた。
父さんがもってきた遊び道具も相手がいなければただのゴミだ。手伝い人まで置いていったが給料をケチられたとストライキしてしまった。勉強なんてもってのほかだしすることがなかったのは前日で解っている。
自分は忍みたいに野蛮な事はしないから気配を消すこともできないし、足音だって極力消してはいるが砂を踏む音が絶えず響いている。
暇潰しにと尾行しているのだが気づく気配のない。ホントに忍じゃないのかとひっそり唸った為声が漏れたが女はやはり振り向くことはなかった。

「ここじゃないのか……、ん?」
里ののはずれまで来ても目的の人物は見当たらなかったらしく、どこにいるんだろうと口にしいきなりこちらを振り返ったから目線を合わせてしまった。
オレの姿を認識するとみるみる渋い顔になっていく女に硬直し視線を泳がせていれば、女はオレの腕を掴み里の内部へと引っ張っていく。
「自分の事を要人だとか主張するなら大人しく人のいる病院に居なさい!私じゃアンタの事守れな……」
「う、うるせぇ!お守りなんて無くたって」
大丈夫だしと声量を大きくして返し腕を振り払う。くそ女!子ども扱いしやがって。
我愛羅とかいうバケモノの頭を愛おしそうに撫で、一般人の癖に忍側に味方し傾倒するナマエなんてくそくらえだ。
オレの方がバケモノよりはるかに重要人物だしもっとちやほや持て囃されるべきなのに。
タンゲは不満を一気に口に出すとバケモノという単語が出るたびにひくりと表情筋を引き攣らせたナマエを背に走り出した。

「タンゲ、そっちは里の外……あー、くっそ!」
我愛羅君やマタンさんに伝えている時間はないだろう。里の外を警備している人たちに捕まればいいがタイミングの悪いことに交代時間なのか人影もみあたらない。
子供ならではの身体の軽さに脚をうまく乗せ駆けていくタンゲを大人の重たい身体で追いかけた。


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