宝石とさよなら | ナノ


▼ 258



「朝からおばさんの顔かよ」
「お前今に見てろよ」
いまいちお偉いさんの一人という認識が出来ずに名前で呼んだがコイツはその教えたはずの名前すら呼ばないので怒りをぐっとこらえ長い溜息をついて気を静める。
アンタを案内出来る人間は出払ってるし、食堂に行くからついてらっしゃいねと後ろ首を掻き、のろのろとした動きのタンゲに発破をかける。
流石牛車で来ただけある。現代人の私には無理なのろさだわ。
着替えの場所すら把握していないのか棚を漁り始めた彼に一言入れてから私も荷物漁りを手伝った。

「アンタ食事の前は頂きますぐらい言いなさいよ」
自分の分を自分で用意するのが珍しいのか知らないが、あたりをきょろきょろ見私既に食べ始めていた入院患者を見て手すら合わせずに食べかけたタンゲを止める。
あの三兄弟はそんなこと言わなくても出来ていたのに……、躾の度合いを比べてはその差に辟易していた。三兄弟が全勝中なのは言わなくてもわかると思う。
手を合わせたあと濃いめの味が好きな私がやっぱりもそもそと薄味の肉を貪っていれば斜め向かいに座っているタンゲが「おい」と偉そうに声をかけてきた。
「お前暇そうだしお願いしたら遊んでやらなくも……」
「おあいにく様、私このあとやることあるので」
護衛の人がいるんでしょう、そっちに遊んでもらいなさいと断れば、タンゲは面食らった顔でこちらを見てきたが、その顔がおかしくて少し吹き出してしまった。
オレは大名の一族だぞと眉間を寄せたタンゲに、何か勘違いしてる?と目を細める。

「貴方に媚を売ろうと一緒に食堂に来たわけじゃないの、担当の人に頼まれたから仕方なくなのよ」
そもそもお礼を言われることはあっても私が頭を下げる理由が見つからない。
名前を教えているのにいまだにお前とかおばさんと呼んだり、人を平気で待たせてそれがさも当然とばかりに振るまったり……。
ましてうちの我愛羅君をバケモノ呼ばわりする親子に敬意なんてあるわけないじゃんと笑った。


_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -