宝石とさよなら | ナノ


▼ 257



「おはようナマエちゃん」
「おはようございます……」
忍は睡眠時間を短くする訓練でもしているのか何なのか知らないが、不健康極まりないと通勤していた時とほぼ変わらない睡眠時間を取る私は思う。
例にもれずマタンさんもで、私より寝るのが遅いのに起床したときにはすでに業務に入っている彼が少し心配である。
まあ体の事は私よりわかっているだろうし無茶はしないとは思うのだけど。ぶっ倒れませんように。
上体を起こしたナマエは窓からのぞく乾いた空と同じように晴れやかな気持ちで伸びをした。昨日私をあれだけ苦しめた頭痛もすっかり鳴りを潜めている。
っし、今日からタンゲの世話だなと気合を入れ、けが人でもないからと病室を取ることのできなかった私を一晩支えてくれた仮眠ベッドをポフンと叩いた。
「そうそう。昨日は我愛羅も居たから言えなかったんだけど」
今日のスケジュールを確認しながら目を抜けることなくマタンさんは切り出した。

「エビゾウ様にでも教えを乞いに行きなよ」
「エビゾウ様……?」
聞いたことのない名前に首をかしげたナマエに「引退済みだけど砂の名軍師で相談役の一人、何かいい案がもらえるかもしれないし」と顔をあげたマタンは付言する。
ナマエはまだまだ考え方が甘い。人を殺すことを躊躇し自分を犠牲にする節があるから力を付けるよりはまずそのロスタイムを失くす方が懸命だろう。
半不死ではあるものの細胞の複製が追いつかなくなれば死ぬわけだし、その時間をなくすだけで大幅に生存率は上がるだろう。
ナマエがまた消えれば我愛羅が暴れるのは目に見えているし、成長した我愛羅の力を抑えられる羅砂ももういない。予防は何でも大事だからね。
まあ他にもいろいろ理由はあるが、チヨ様は直情的すぎるから戦場に置いて生存を優先に考えられる弟様の方を選んだわけである。
どちらにしろ今後一生を砂で過ごすことになるわけだし挨拶はしておいた方が良い。暇を持て余しているだろうし退屈しのぎに修行の相手をしてもらえるといいね。
他人行儀な独り言を脳内で終え「今日は夜に手術するからそれまでに帰って来てくれればいいし」と無精ひげを擦った。

「あ、朝食ついでに食堂へタンゲを連れてってやって」
朝は手が回んないしこの忙しい時にへえこら頭下げてらんないからさぁとウインクを投げたマタンにナマエは「朝からか…」と肩を落とした。


_



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -