宝石とさよなら | ナノ


▼ 252



「……死ぬ」
大名がゆったりとこちらに向かっているらしい。無理矢理起こされた私の覚醒しかけている頭は鈍痛を放っておりベッドの上でのたうつのを我慢し抱え込んだ。
前回は一日そのまま寝ていたからここまで感じなかったがこれはひどい……、部屋の中へと放たれた唸りに目の端でビクリと少年がはねた。
ああ、そういえばいたんだったね。こちらの様子を静かに窺っている生意気な少年を無視して再びベッドに倒れこむ。正直我慢ならない吐き気である。
一応配慮してくれてたらしくちゃんと服を着せられている為へそ上まで肌蹴たそれをひっつかみのろのろと下へ引いた。
「マタンさん、ちょっと頭痛薬ください」
「麻酔抜けきるまで次の処方できないからセルフプラシーボしときなナマエちゃん」
「まじか…」
コップに水だけ注がれそれを薬をすでに飲んだと思いこませようと一気飲みするもやはり効くわけがなく、うーうー唸っていればドアがかなり大きな音を立てて空いた。
「マタン、聞いてないぞ!」
オレは今日負傷した忍の方の手術だと聞いていたのだがと詰め寄る我愛羅に、マタンは可愛く片目を瞑りながら人差し指を口の前で立てたが「50の男がやっても気持ち悪いだけ」と我愛羅に一蹴された。
漫才のような二人を横になっていたナマエが頭に響く音を早くとめようと我愛羅を呼ぶ。
くいと手首を曲げひらひらと振っているナマエの力ない様子に駆け寄った風影の慌てっぷりを驚きつつ目にしたタンゲにちらりと我愛羅が目線を注ぐ。
その鋭い眼光に力の皆無なタンゲは「ひ」と短く声を上げたが我愛羅の方に横になったままナマエは手を伸ばすと「我愛羅君」と頭痛で思わず眉を寄せつつ言葉を紡いだ。

「私、頑張るからさ。強くなるから」
一緒に居て欲しい。そう零し我愛羅の汗のにじんだ頬を緩く撫でたナマエに我愛羅は口元を震わせた。
仕組まれた形ではあったがなるべくしてなった共依存の関係に胸の内で嬉々しつつ、テマリの言葉を思いだし忘れないうちにと音にする。
「お、オレも……悪かった。ごめんなさいナマエ」
本当は母よりもっと大切な人だって言いたかったんだと、自分の出生の出来事に夜叉丸、そしてナマエの事で“母”という単語を使うのが怖かったのだと普段口下手な我愛羅からは考えられないほど零れ落ちた一人のバケモノの気持ちにナマエは笑った。


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