宝石とさよなら | ナノ


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何やらナマエが変なことを企んでそうだと訝しみつつも“我愛羅君”に戻ったオレは手術を終えたばかりのナマエの腹に負担にならないよう少し距離を取りつつ久々に頬を撫で触れる彼女の手の感触を楽しんでいた。
たかが数日と言われるかもしれないが、それが普通だった人間にとっては耐えられないほどの期間なんだと一つ主張しておきたい。
惜しむらくはこの至福の時がもう終わりに差し掛かっているところだろうか。オレ達に大名の子息の弱い視線が刺さっていたが、今度の相手は今のように無視するわけにはいかない。
身体がつらいだろう、起きなくていい。そうナマエに伝え、彼女を背で隠すとオレは癖で組みかけた腕を解いた。
「タンゲ!どうだ新しい腕は」
「……父さん」
二度目の襲撃を受け蝶番がぎしりと悲鳴を上げたがそんなドアを微塵も気にすることなく、自分の愛息子へとまっすぐ飛んで行った横にでかい体へと一礼する。
「伝達が行き届いてなかったようで申し訳……」
「何でバケモノがいるんだ」
こちらは黙っていろと言ったはずだが。詰め寄る大名に器具の手入れをしていたマタンが危ないと冷や汗をかきつつ何とか道具を置いた。
穏健派でない彼は忍を金の亡者と思っている節もあるし、案の定出ると思っていた言葉を口にされ、ひくりと口の筋肉が引き攣っただけでどうにかなりそうだ。
それよりも今にも噛み付きだしそうな後ろのナマエへと合図を送り落ち着かせると、我愛羅は気にもしていないと失言を流し里に泊るかと尋ねる。

「タンゲ、一週間たったら迎えに来るが良いな」
護衛は手配しようと我愛羅の方に目線をやることなく言い切る。
拒否する時間すら貰えなかったタンゲは、足早に去っていった父の背中へ呼びとめようと伸ばしかけた手をおろし、はいと短く答えた。


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