宝石とさよなら | ナノ


▼ 105



ナマエと共に木の葉に残りたいがひと月も里に戻らないと流石に機能しなくなってしまうだろうし、何よりナマエが許さないだろう。
自分としては怒られるのも一興だが、頭を回し甘やかしてくれなくなったら嫌なのでやめておいた。
紹介されたヤマトとか言う男が来ていたベストがあまり使いこまれていないところを見ると、きっと所属は正規の上忍ではなく暗部か何かなのだろう。
わざと汚しているように見せかけていたが、ペイントに関してはカンクロウを小さい時から見ているからなんとなく判断がついてしまう。
歩き方も中忍のそれとはほど遠いものだったから実力的にはナマエを任せていても問題なさそうだとは思える。
心配なのはナマエの人を垂らしこむ能力だ、おそらくヤマトという男もかかるだろう。
それにアカデミーなんて人の多いところに行かせたくなかったが、今ナマエの身は木の葉の自由だ。
連れて帰るまでの辛抱だ。

畳へと胡坐をかき、プルタブを引き揚げ小気味よいガスの抜ける音が2つ響くと、ナマエはもうオレにばれてしまっているからか隠そうともせずに上機嫌で「乾杯」なんて缶を合わせてくる。
それに答えてやり傾ければ特有の苦みが喉を流れ落ちる。
風影になって偶の興として上役やら大名たちの相手をすることはあったが。そういえば年の近いものと飲んだことはなかった。まあナマエも一回りほど離れてはいるのだが。
酒の味なんてそこまでわからないがやはり接待の席では高いものを飲んでいたらしい。いつもの甘い口触りをした米の酒とは全く違いビールには苦味しかなかった。
それでもうまそうにごくりと喉を鳴らすナマエは座卓の上に放られていたスナックをちょっとだけ苦戦しながらあけた。切れ目を縦に裂けばいいのに律儀に横に引っ張るから少しハラハラしたが零さなくてよかった。
ナマエと同じように口の中に放ったスナックは確かにこの酒にあっている。
「我愛羅君はさ」
みんなに慕われてるんだね、ナマエは嬉しそうに破顔させた。最適な言葉を探してあけた間に焦り、結局口数の少なくなってしまうオレは少し間を開けて結局そうだなとだけ言った。
オレが小さかった頃のナマエは人とのつながりを作ってくれようと躍起になっていたのだ。彼女は自分の事のように喜んでくれている。
私が元の世界に戻ってからも我愛羅君は頑張ったんだねぇ、ともう8年もたっているのにあの時と同じように頭を撫でた。
触れてくれるのは嬉しいんだが子ども扱いをされて少しだけおもしろくない。オレはビールを座卓に置いた。

「ナマエは、あの時死んだのか?」
「私もわからないなぁ」
頭に乗っていたナマエの手を掴む、温い。ずっと欲しかった温度だった。みんなが背中を押して温めてくれたがこの温度だけずっと足りなかったのだ。
足を畳むナマエに四つ這いで近寄る。立つほどの距離ではないからすぐに隣に来ることが出来た。
きっちりと合わせられた身頃は肌の露出を最低限に抑えている。ナマエの胸元に耳を当てた。
弾力のある脂肪が中途半端にオレの頭を浮かせている。


とくり。

一般よりは良い忍の聴覚がナマエの心臓の音を捉えていた。
そのまま目を閉じ臓器が休むことなく動く音を聞くオレを振り払うことなく缶に口を付ける。
「生きてるな」
「そうね」
本日何度目かの安堵を何度も何度もつぶやき空気に混ぜた。
もしかしたら岩に潰されて死ぬ直前に元の世界に帰ったのかもしれない、疑問には思えど今ここに生きて存在している事実に比べればとても些細な事だった。
心音が子守唄のように響き、ほぼ飲んですらいない缶をそのままにナマエの身体へと身を預けてしまっていた。ナルトと出会ってから、少しずつまた睡眠時間が長くなってきたものの、隣に人のぬくもりがあるのではやはり違う。
夕方のように布団を俺にかけ頭を太ももの上に降ろすと「おやすみ。我愛羅君」とオレの飲みかけの缶まで傾けながら懐かしい言葉を掛けられた。


_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -