宝石とさよなら | ナノ


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苦笑いするヤマトさんへ握手は出来なかったがよろしくと頭を下げておいた。これからお世話になるんだからあまり印象を悪くするようなことしたくないのに我愛羅君たら。
私の仕事の話も耳に入れてあったらしく「それじゃあ明日の夜アカデミーに迎えに行きます」なんて言って攻撃をされないうちに消えてしまった。何だっけこの術、ヤリスマルさんが使ってた気がする。

要人としてだから普通はホスト国が、あの雰囲気からしてお高そうな旅館の宿泊代を払ってるのだろうけど、やっぱり降って湧いて出た私の分は別らしく、蹴破られた病室のドアの請求書と共にもう一枚請求書が渡される。
おうふ、やはり高いじゃないですか!
綱手様はそれを見せた後、別案として金銭は木の葉負担で火影邸で大人しくするという選択肢も与えてくれた。豪華な食事は出せないし客人としての接待なんてないが寝床とシャワーなどの最低限寝泊まりできるものはあるという。
私が「それで十分です」と言うのを遮って、我愛羅君が請求書を本国に送っといてくれと綱手様に戻した。監視生活は嫌でも慣らされたから大丈夫なのに。
そこまでお金かけてもらえないと断ればキッと睨みつけられてしまった、大きくなって迫力増したね?

「ナマエはオレといるのは嫌なのか」
「まったくそんなこと思ってないです」

ただね、我愛羅君のお父さんから支給されていた生活費二週間相当のお金を一晩で使ってしまうのが忍びないってだけなんです。物価から見ても生活費かなり渡されてたから貯蓄まで出来てたし……。
心情を吐露すれば「ナマエは何も心配するな」とずいと近づけられた顔で朗笑する。
少しでも多くナマエといたいんだなんて真顔でクサい台詞を吐く。我愛羅君はいたって大真面目なのだろうが彼はいろいろ大事な言葉を抜かして喋るから人前でやれば勘違いは確実だ。
膝に置いていた右手を掴まれ、羞恥し思わず綱手様ぁ…と助けを呼び目を泳がす。

「ん?ああ我愛羅、キャラが変わってるぞ」
シズネさんに請求書を頼んでてこちらは放置だったようで、綱手様に求めていた言葉と違うものを半ば投げやりに放られる。
結構ぼったくりましたねと心配そうに我愛羅君を見たが、手を握り迫っている我愛羅君に返事は貰えなそうだと察したのか、乾いた笑いを零しつつドアから出て行った。
何度も言うが我愛羅君は顔はそれは整っている。眉なしだけど相当美形の部類に入るだろう。
まして今は子供と大人の入り混じったなかなかにあざとい時期だ。例え私が美形に迫られる耐性があったとしても回避できない。何てことだ!誰でもいいから止めてください!
冷や汗をかけば我愛羅君が「からかい甲斐があるな」と笑い頬を引っ張られた。また、この口が喋っちゃったのか!
「そこ話が終わったからイチャイチャしないでさっさと帰る!」
「ふむ、すまないな」
バシバシと急かす様に我愛羅君の背中を叩く綱手様。これから集会があるんだなんて言ってるから本当にお忙しいのだろう。
「また賭博か」
「今日こそは勝てそうな気がするんだ」
趣味なのか相当楽しみなようでスキップでもしそうな勢いで廊下へと向かう綱手様に、そうかとだけ言い我愛羅君は瓢箪を背負った。
帰るぞと我愛羅君は自分と私が座ってた椅子を机へと押し込む、私ものびて赤くなったであろう頬を摩り廊下へと向かった。



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