宝石とさよなら | ナノ


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少し前を歩く我愛羅君が後ろだと迷子になった時にわからないと立ち止まった。
いやなんて言うの…ちょっと周りの好奇の目が痛いというか……、後ろの方が我愛羅君の背中追いかけるだけでいいから楽だと遠慮するも有無を言わさず隣に引っ張られた。
「夜まで待機だ、宿に戻るぞ」
「戻るぞってそれ私も入っていいの……」
「構わん、いざとなれば火影に交渉でも追加で金でも払おう」
笑顔で返す我愛羅君にあ、はいじゃあ……としか返せない。ひえぇ、偉くなったもんだ……。

少し歩き着いた先が宿って言うか結構豪華な旅館でさらにああ要人なんだと再確認する。いやさっきは曲がり角で待ってたから内装みてなかったんですよ……。
従業員もお帰りなさいませだの言ってるが女将は特に戸惑いの目を向けることなく「例のお方でしょうか」なんて言うからここでも私の噂は広まっているらしい。
すまんな、と女将にいう我愛羅君に「いいえ火影様の方にまとめておきますね」と返し奥へと引っ込んでいく。たまにあるのか女将は慣れてるようだった。

「お邪魔します」
真新しい畳の匂いを吸い込む。実家の和室もそういえば最近畳を張り替えたとか言っていたな、ああいい匂いだ。
借りたサンダルを脱ぎストッキングで畳を楽しむと後ろから我愛羅君が腕を回してきた。

「ずっとずっと会いたかった、守れなくて悪かった。あの日からずっと謝りたかった」
「我愛羅君のせいじゃないし謝らなくていいよ、私も会いたかった」

一旦離してほしいと告げるがさらに腕の力を強めて肩に顔を埋めてきた。私もぎゅってしたいんだけどな。眉を下げ苦笑すればおずおずとだが解放してくれる。ああまた泣いてるの。
「我愛羅君は昔から泣き虫だなぁ」
「ソンナコトナイ」
「片言になってるよ」
昔のようにぎゅうぎゅう抱きしめてやる。
きゃあなんて子供の高い声は聞こえなかったが、声変わりした我愛羅君の嗚咽が再度顔を埋められた肩に響いた。


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