宝石とさよなら | ナノ


▼ 95



我愛羅君の好物である砂肝を置いているところに案内してくれるのかと思えば普通の定食屋だった。
「前に知り合いにおすすめされた、ナマエと来ることが出来てうれしい」
こっちとナチュラルに手を引かれ、こっ恥ずかしいことを並べていく我愛羅君にどうにか顔を染めることなく私もと返す。実に心臓に悪い。

昼時を過ぎていたからか店内は比較的空いており、4人で座るボックス席へと案内される。
壁にかかったメニューを見て悩む私を瞬きすらせずに見つめてくるので決まったのかと問えば「ナマエと同じにする」と真似っこを発動させた。
ああこの感じも懐かしいな、じゃあ親子丼定食でと注文を貰いに来てくれたので伝えれば従業員のお姉さんがきゃあきゃあ言いだした、悲鳴は悲鳴でも黄色じみたものを耳にし感慨に浸る。
うんうん人気になったんだね私嬉しい。あ、ちょっと涙出てきた。
我愛羅君も見た目だけではなく中身もちゃんと成長したらしい、少しだけ表情筋を崩し微笑めば注文を取りに来てくれた子がそそくさと奥に引っ込んでいった。
贔屓目抜きでも我愛羅君は整った顔をしているし風影という里のトップに立っている。それで紳士的な態度と柔和な笑顔なんて見せられたらコロッと行っちゃう女の子は多い筈だ。
私のいない間になんて罪作りな男になってしまったんだ我愛羅君……、でも小さいころも天使だったからこうなるの予想ついてたよ。

「ん」
「我愛羅君流石にここではちょっと……」
アウェイだよアウェイ。他里の定食屋だよ……!あの従業員の子なんてすごい目で凝視して来てるからね!
片方は超有名人で片方は悪目立ちする格好の女でそういう事をやってはいけないと思うんだ。ほら、この店中の視線どうすんの。
というかその癖私がいなくてもなおってなかったのか、誰にやってたんだ。テマリお姉ちゃんにか?微笑ましいじゃないの。
ちらちらと店内をこっそり目だけで見回し、突き出された箸を拒めば何とも頑固に育ってしまったらしい。さらに大きく「ん」と喉を鳴らし突き出された。……えーいままよ!

「どうだ?」
「……ほいひいれふ」
「そうか」

満足そうに笑う我愛羅君は手元を一切動かさず、私が飲み込むのを待ってから口を開けた。つまりお前もやれと。
「どうですか」
「勧められただけはある」

また二人で来よう、とようやく自分の定食を口に入れた我愛羅君に私も箸を動かした。二人をやけ強調していた気がするのは気のせいなはずだ。


_



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -