宝石とさよなら | ナノ


▼ 97



まだぐずっているがそろそろ肩が冷たくなってきた。
ジャケットと顔が大変なことになってるなこれは……、大きくなっても引っ付き虫のままの我愛羅君を連れだって洗面所でタオルを濡らす。
畳に座り近くにあったティッシュボックスを差し出せば結構な音を出してこう鼻する。
我愛羅君のせいでゴミ箱が大変なことになって来ている。きっとそのティッシュに隠れた鼻の下も赤くなってるだろう。
えぐえぐとしゃくりあげる我愛羅君が何か言いたいらしいが全く言葉になっていない。ほぼ母音のみで構成された音をはいはいと聞き流しとりあえず濡らしたタオルで目元を拭いてやった。
流石に風影になった我愛羅君のこんなところは見せられない。ティッシュが無くなりかけているのでジャケットをハンガーにかけると廊下に出る。後ろで待ってだのなんだの聞こえるがぴしゃりと閉め隠してやった。
通りかかった従業員にすみません、ティッシュを2箱ほどいただけないでしょうかと声を掛ければ急いで持ってきてくれた。救急箱と共に。
怪我じゃないんです、ただ泣いてるだけなんですなんて言えずティッシュだけを受け取り部屋に戻ろうと引き戸を開ける。
せっかく隠していたのにどうして目の前にいるのかね君は。後ろに従業員さんいるんだけど。
私の姿が翡翠の潤み切った瞳に入った瞬間抱きついてびーびー喚く我愛羅君を見て従業員のおばさんはあらあらまあまあなんて笑う。
「あの、どうか内密に……」
冷や汗をかく私に「流石にこの姿は見せられないですものね、タオル持ってきますわ」と階下へと降りて行った。すみません本当に。

「ナマエはいつもそうやってオレから離れる!」
だからっていつまでも鼻水垂れ流しはみっともないでしょうに。何で拭く気だったのよと反論すれば「ナマエ」とだけ返された。それは流石に怒るぞ。
顔を顰めればナマエが怒るなら良いんだそうで。随分とめんどくさい性格に育ってしまったんだな息子よ……。
控えめに声を掛けられ引きずりながら向かえば先ほどのおばさん従業員がタオルと鼻に優しいものをと言って柔らかい高級ティッシュをくれる。
風影を床に引きずってる図を見て表情を変えることなく去っていった従業員さんが格好よすぎる。

流石にあれだけ泣いて出すものもなくなったのか真っ赤になった鼻と目を濡れタオルで拭き休ませてやる。
トロンと泣き疲れて瞼の落ち始めた我愛羅君を引きずり布団の上に寝転がそうとするががっしりとホールドされた腰では思う様に立てない。
観念して座り込めばずりずりと太ももに頭を乗せてくる。夜の会議は何時からなの。
「呼びに来るから……」
背中側をがっしりと掴み寝息をたてはじめた我愛羅君に、後へと腕を伸ばし苦労してとった毛布を掛けてやった。


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