何々そんなに心配してくれたのナマエちゃぁんとにやにや近づいてきたエクボにそりゃ数日見なかったからなと床に押し付ける。当たり前でしょが、毎日心配してたわなんて正直に答えれば「お、おう」なんてどもり出す。おいそっぽ向くなこっち見て返事しろ。
「おい、悠長に変なのと遊んでんな。帰るぞナマエ」
モブ達はもう補導される時間なんだよと急かされ、エクボの天辺の靄をつかみ駆け出す。お前今日はうちで説教だから。逃げねぇっつーのと喚いてるエクボがばたばた暴れてるが今のお前信用0だから。先を行くボスの隣を進む兄と、そのあとを追いかける弟君。少し離れて私が追い付くのを待ってくれていたヅラ君のところまであと数歩となったところで思い出した私は立ち止まった。
「先に行ってて」
そう告げて後ろで立ち竦んでいた彼らに近づいた。霊幻に作れと促されて作っていた名刺を取り出し裏に電話番号を書き記す。
「アンタは必要そうだ」
眼鏡の男へ指をさしそれだけ口にすると名刺を地面に置いたまま先を行く彼らの後を追った。「なんで個人情報渡したんだ?」脇に抱え直されていたエクボの疑問に答える。
「昔の私と似てたからかな」
分身する男は夢を追い求めていただけだしエクボを閉じ込めてた男も手に職があるタイプだからどうにでもなりそうだけど、あの眼鏡の人はなんもなさそうだったからね。きっと必要になる。「ふぅん?」壺の中にいたエクボは桜威が過去を嘆き叫んでいたことは知らない。理由を聞きたそうにはしていたが深く掘り下げてこないエクボは実に大人だった。アイツら以外にも結構幹部いたけどなという言葉も飲み込んだが。
なおナマエの予想通り、後日桜威から電話がかかってくることになる。


エクボも居たし先に行ってろと言われたものの、薄情ではないテルは後ろをちらちらと確認しながらのろのろと進んでいた。モブの師匠がタクシーを呼び出していたのを視界の端で確認していたのでそれほど急がなくてもいいと考えたからである。あと純粋に心配していた。話もしたかったし。やられていたらと何度目かの振り向きで通路の角を曲がって追いついたナマエが隣に並んだ。

「何してきたの?」
「ナイショで」

口元に人差し指をあてるナマエをみておもしろくないと口を突き出した。彼もそれ以上食い下がることはなかったが表情にすぐに出る所はエクボより子供だった。
「そうだ、あの時はありがとう」
「おん?どういたしまして」
気を取り直したテルが話を切り出す。一瞬何の話かと考えたナマエがぽんと手を叩くとまさか重ねてるとは思わなかったと笑った。先ほど桜威に刈り取られた頭は店舗のマネキンに被せていた時と同じレベルで自然である。しかしどうして重ねてしまったのか。まあ深くは聞くまいて。ナマエも大人だった。

「後日実はまた店に行ったんですけどやめたって聞いて困ってたんですよ」
しっかりしたお礼も言えてなかったし。疲れましたけど今日会えたので良かったです。年上の女を落とすテクをフル活用するテルだがナマエには通用しなかった。喜んでもらえてよかったよと完全に眼中にない応対で返され凹むテルを見て詳細は知らないが察したエクボが合掌する。少年の心を弄んじゃダメだぞというエクボの心の声はナマエに届かない。めげずに自己紹介をするテルに名札で一方的に知られていた苗字に追加して名前も開示した。タメでいいよ。ニコニコとそう告げるナマエの名を口の中で暗唱するテルとは対照的に一発で覚えたナマエはそういえば超能力使えたんだねと会話を続けた。
「え、ああうん。影山君には敵わないけど」
「そうなのか、モブくん強いとは聞いてるんだけどさぁ、実際どのくらいか知らないんだよね」
お祓いの作業はまだ見たことないし今日だってボスに力を渡したのを見ただけである。目の前で自分を助けてくれたエクボを贔屓目に見るのは当然だった。エクボより強いの?そう言って脇に抱えていた緑色の浮遊物を取り出す。比較対象にされたエクボは少し期待する。
「うん」
「即答やめろ!」
上級悪霊としてのプライドをズタズタにされたエクボが叫んだ。


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