「おじいちゃんじゃん」
ナマエのつっこみを皮切りにその場の人間がざわつき始める。ちょっと待って仲間も知らなかったのか。爪とかいう組織みんなそうなの?そんなんでリーダーシップとれんの?純粋な疑問が脳裏を支配する。いやそうだった、この人カリスマ性ないタイプだったわ。恐怖で縛り付けるのは下策だぞ。口には出さなかったが詐欺師の二人は同じことを同時に考えていた、仲良しである。
喚く遺志黒を一刀両断するモブ君に憐れんだ視線で追撃するボスの表情は死ぬほど冷たい。だから恐怖で縛り付けるだけでは部下はついてきてくれないとあれほど言ってるのにと突っ込むナマエはその言葉が口から出てないことにまだ気づいていない。人を従えるには努力とカリスマ性が必要なのだ。そのことをわかっていない遺志黒という男から吐き出される思いは拙く醜い。その歳までどうやって生きてきたのかと考え始めてしまったナマエへと唐突に振り向くボス。正確にはすぐそばのモブ君を見やる。首を振るモブ君。えっ、何の話をしてるの君たち…。おじいちゃんが地団駄を踏んでる間にボスの背で陰になって丁度見えない位置にズレてしまっていたのでのぞき込むように脇から顔を出す。なるほどまずいですねぇ!
「てってて、転写!」、
どもった。先ほど遺志黒がやっていたことの真似をしてみる。私は岩。千代に八千代に苔むすまで育ったさざれ石の岩ァッ!君が代である。とっさに出てくるレベルで身体に国歌が染み込んでいたおかげで転写使えましたわ。ちなみに某神社のさざれ石は3トンある。
一気に重くなった自重に身体に相当高負荷がかかったがどうにか転写直前に前にいた二人の足を掴めたので腕が無駄に床に落ちずに済んだ。引きずられた背後の少年たちは状況判断能力に優れているらしく、とっさにあまり位置が動いていなかったのを確認して私の背中に張り付く。重みで地面が割れだしたが破片は黒玉へと簡単に吸い込まれ消える。ちょっと待ってこの掃除機玉引力強くない?私が今イメージを転写してる岩3トンあるはずでしょ?え?やばくない?四人を支えるだけで地味に引っ張られているのに少年たちの背後には下っ端の軍団まで迫ってきていた。ちょっと待ってそれ以上来たらマジで死ぬから!風力受けないようにせめてしゃがんで!ていうかヅラくんは頭抑えてる場合じゃないでしょ!ちゃんと捕まってくれる!?

「往生際が悪い」
いきなり真横に登場した少年に殴られた遺志黒が吹き飛んで壁に衝突する。足押してくれた子だ。暴風でぼさぼさになった髪を視界確保のために転写を解除して手櫛で撫でつけながら注視する。弟君もなんらかの接触をしていたらしく反応しているが、吸い込まれた破片が粉々に砕けるのを見ていたはずにも拘らず迎え撃とうとしてる少年に叫ぶ。触れる。人体が圧縮される図を想像してモブ君の目を塞ごうとするが自分一人しゃがんでいるため手が届かない。ボス手を貸せよ!

「超能力で作ったもんならどうにでもなる」
ハン、と鼻で笑って一発で霧散させた少年に身震いする。強者のバーゲンセールか?ひらりと片手を動かしただけで床にめり込んだおじいちゃんに思わず口元を抑えた。怖すぎる。その笑顔の下にそんな凶暴性隠してたのか君…。立ち竦んでいた眼鏡が何の用だと警戒心を露わにしたが、彼にはもう武器は残っていない。その顔には焦りが浮かんでいた。それをすべて知っているのか知らぬのか、スルーして脇に押しやると私の前にいるモブ君へと指を差した。

「がっかりだぜ、腑抜けかよ」
今までどこかで観察していたらしい。幽霊だと思っていたが隠れていただけらしいことに安心すればいいのかどうすればいいのやら。複雑な気分に陥っていたら弟君にスリーピースを向け指をワキワキさせだした。「またな!」友好的である。何、なんなの?君の本性どれよ。今日めっちゃ心乱されまくってると苦い顔をした私は本日何度目かの眉間のしわを抑えため息をつく。怖いからまたなじゃなくていい。弟君防犯対策しっかりね…。

青少年の健やかな日常を応援しだした私の耳に「形勢逆転」と高らかな宣言が届く。今度は何?誰?もうお腹いっぱいなんでおかわりいいです…。仲間の男がもうやめておけと静止するが壺を持った男は聞く耳を持たなかった。困る、モブ君も残量0なんだけど…。エクボ助けて、お前しかいないわ。数日前の出来事を思い出す。彼らと知り合ったのはあの緑の浮遊物のおかげであり、私が今生きてるのも彼のおかげである。正直なところ、対悪霊に関してはモブ君より信頼しているので駆けつけてきて欲しい。
そんな私の願いが叶ったらしい。蓋をずらされて中から出てきた悪霊がエクボだったのを確認した私は、近づいてきたエクボに無言で一発入れることにした。しっかり閉じ込められてんじゃないわもっと頼りにさせろ。


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