黒玉とかいう掃除機攻撃に一番近くにいた私たちが引きずられていくのに気づいてモブ君達が自分たちの方に引き寄せようとしてくれるがめちゃくちゃ痛い。というかボスより30p位近距離にいた私のパーカーのフードが吸い込まれて無残な状態へとなったのにちょっと泣いた。チャックで取り付けの出来るちょっとお高い奴だったのに…。そのチャックが壊れたおかげで己も吸い込まれないですんだことをナマエは理解出来ていなかった。
三人が大人達を自分の側にどうにか引き寄せ地面へとおろした瞬間黒玉が通路を波動で削る。その威力にドン引きしている私たちの隙をつくように男が分身して襲い掛かってきた。モブ君が何体か消すのを見て同じことをしようと試みる弟君の脇腹に拳が入った。多勢に無勢すぎる。膝をついたのを見て思わず駆け寄ろうとした私の前にも来てしまいたどり着けなくなった。思わず舌打ち。あまり育ちがよろしくないんでな。だが手に武器はない。短期決戦のつもりでさっき下手に能力を使ったから警戒されている様で一定距離を保たれている。
また人数を増やされた。死角を取ろうと回り込まれたがヅラの少年が何人かまとめて吹き飛ばしてくれたのを見逃さずに足に転写を試みる。ジャンプ一回で囲まれ殴られてる彼の元へ。着地は彼を飛び越えた先へ。めんどくさいなこれ!

「よっしゃ巻き込めた」
二人ほどを飛び蹴りで消し去り、着地にも成功したナマエがその勢いのまま裏拳を放ち三体目を霧散させる。骨折れてないかと問われた律は頭すれすれの位置を飛んできた成人女性に心臓がひゅんひゅんしていた。もう少し上に頭をあげていれば後頭部に踵が入っていたんですけど!糾弾したくてもビビって言葉が出ない律の顔の真横でノーカウントで炸裂した裏拳に返事を返さないことを決め口を噤んだ。せめて予備動作が欲しかった。
「立てるかい影山弟」
「ええ、力の枯渇が心配でしたけど」
アンタのおかげで物理攻撃でも一発で消えることわかりましたし。数秒かけて気を取り直した律の答えに「了解、私も相手が数だけで素手なら全然行けるわ」とナマエも構えた。この人案外不良とかなのか?ふと先日まで会長とタゲっていた鬼瓦の顔が浮かんだ。アイツも同じように好戦的だったが自分たちを攫ってきた顔に傷のある男に土下座をしていた不良たちのことも同時に思い出し、不良の線を自分で消す。鬼瓦は自分より強くても立ち向かうタイプだろうし不良という括りでまとめるのはいささか乱暴だったと反省していた律に「ということで頼むね」だなんて言いながら勝手に背中合わせにされた挙句背後を勝手に担当させて来たので、どうして兄以外の人間とタッグをなんてぶつぶつ言いながらも向かってきた拳を往なした。昔鍛えれば念とか気を使える様になるのではないかと漫画に影響されて習ってた空手が役に立つとは思わなかった。

二人で対処を始めたは良いものの、多勢に囲まれるのに慣れているナマエと一対一の試合ばかりだった律ではうまく連携が取れずに再び無限に湧く男に押されだした。
とうとう顎に一発貰った律が膝をついたところにすかさず飛んできた拳をナマエが庇いに回り、その隙に死角から飛んできた二発を顔面で受け止める。転写を発動する方が隙が生じる為に力を使わずにいたのでモロに食らったがナマエはしぶとかった。一瞬ふらつきかけたのを四股擬きを踏み踏ん張ると腫れた顔で笑う。
「なるほど素人だ」
変に超能力でのパワーの上乗せもしていないし、武術を身に着けてきた人間の余裕と空気もない。完全に喧嘩殺法だった。しかも数での喧嘩は普段してないどころか喧嘩そのものに慣れていないと見た。経験から分析するナマエの口が弧を描く。
図星だった。男は舐められたと青筋を立てる。まんまと挑発に引っかかった男から目を離さず、自分を庇って拳を入れられた女を心配してよろめきながらも立ち上がった律へと小声で下がれと命令する。突き放すような言い方ではなかったが行間を正しく読んだ律は少しずつ女から離れだした。顔を赤くし盲目的になっている男の攻撃はほぼナマエへとむかっていく。
ナマエは、バリアを張りながら揉めている霊幻達の元へと近づいていく律の背を一瞬だけ目に入れて、追いかけようとしていた分身の後頭部に膝を叩き込んだ。霧散。実に懐かしい。懸命に取り繕ってきた良い子もこの場では何の役にもたたないので捨てよう。いやぁ、あのヅラの子に武器持ちを担当してもらえてよかった。後は頼むよボス。


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