「ナマエさん下がって」
背後からモブ君に声を掛けられ気を取られた私の眼前で爆発的な波動を起こされる。
頭を庇うように前に出した両腕の隙間から本当にギリギリの位置でバリアを仕掛けてくれたらしい。爆風で地面も壁も天井もえぐれているのに五体満足なままである。ていうかうそうそマジで?やばくない?強くない?私の能力と比較しても威力おかしいでしょこれ、ノーモーションだったんですけど!

「おいナマエ、俺達も逃げるぞ」
「モブ君達は!?」
お前より強いから先に逃げても大丈夫だ。いい笑顔である。ボスが認めるほどに明らかな強さなのかなるほどね…、いやというかなんで今ナチュラルに貶されたの?帰ったら覚えとけよ。
「キミ達は逃がさないよ」
「なんでだよ!」
ボス違いを起こされたことで逆鱗に触れたらしいけど見逃せよ!子供かよ!いや背丈は子供レベルだから子供なのかもしれないけど!もっと大人になろう?なにもいいことないよ!むしろ下々の者に慈悲深さを見せることによって己のカリスマ性が高まるんだぞ、覚えとけよガスマスクの子!ナマエは口を鯉のようにはくはくと開閉させた。なおここまですべて心の中で叫んだので誰にも届かないのである。ショックで最初の一言以降声が出てないのに気づいていなかった。
「ぺしゃり」
ぺ、ぺしゃりじゃね―――っ!!マジかよこいついたいけな中学生に躊躇せずに暴力振るうとかありえないでしょちょっと待ってなんでこんな映画みたいな状況になってんの、つい先日まで平和に暮らしてたのに。うおぉもう少し出来る範囲が解明されてからとかお披露目時期だの気にしてられるか!イメージ!転写!

「うちの先輩虐めてんじゃねぇ!」
「対超能力者ドロップキック!」

右からナマエ、左から霊幻が飛び蹴りをかます。不意打ちで左右から衝撃を加えられ、併せたわけでも狙っていたわけでもないとはいえ思わずギロチン状態になった遺志黒は脳震盪を起こし倒れた。霊幻がスムーズに着地したのと対照的にその勢いのまま遺志黒の頭一つ分だけ射線上から横にズレた壁に激突したナマエがめり込む。「一人自滅したんだが…」桜威が思わず突っ込んでしまっていた。
「くそ、まさか着地のイメージまで浮かべないといけないとか…」
ダメだな私には使いこなせないわこれ、足がハマり上半身を地面に投げ出す形になったナマエが腐る。頭を強打しないで済んだのは確実にターゲットの身長が低かったおかげであるが代わりに打ち付けた背中がめっちゃ痛い。でもとりあえずモブ君への攻撃は止んだらしいので良しとしよう。んじゃ逃げようぜ、私回収してってくれよな!そんなナマエの願いは霊幻に露ほども届かず、説教垂れだした上司に自力で何とかしないとだめだこれと諦念した。とりあえず足抜くか……。
「ひえ…」
私の揃えられた足の脇に、ガスマスクの爆風によって穴の開いた箇所があったのだが、そこから人が覗いていた。思わず小さく悲鳴を鳴らすが少年が口元に人差し指を当て、次に敵の方を指さしたことで口を噤む。そうだなバレるもんな。ぐったりと倒れ込んでいてしかも身動きの取れない私よりはったりを仕掛けてきたボスのが脅威だもんな。ばれないように小さく指で丸を作る。了承の意は伝わったらしく黙ったまま頷くと足に触れられた感覚があった。押される。めっちゃ力押しなので痛いんだけど悲鳴を上げることは出来ないので袖を噛んだ。スポン。中途半端に上に持ち上げられていた下半身が瓦礫の山に落ちた。めっちゃ腰強打した…つら…。多少違和感はあるものの移動は出来そうなので少年にお礼を言おうと顔を向ける。い、いない…。幽霊とかやめてくれよまじで…。エクボいないんだぞ今…。
死んだふりをしてなるべく存在を消していたがとりあえず無策で二手に別れたままなのはまずいだろう。ボス達と合流するために腰に負担がかからない方法で起き上がろうと一旦俯せになった私の目の前に見覚えのある灰色のスーツが飛んでくる。バッカ!ボスの馬鹿っ!完全に侵入者排除ムードになっていたのに思わず乾いた笑いが出た。ボスの口でどうにかならなかったってわけじゃんこれぇ…。


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