翌日。

「仁王も柳生も夕べはよく寝た筈だよね」
「ああ。朝、ギリギリまで起きて来なかったな。たるんどる!」
「悪戯されても起きない真田よりはたるんでないとは思うけどね」
「!!」
「鬼瓦!って言ってみて」
「……ところで幸村、何故今日もAB組のバスに乗っているのだ」
「いけない?」
「い、いや……」

大阪への移動中、柳生は死んだように眠っていた。あの状態で深く眠れる程神経は太くない。しかし何をしても起きなかったくらい熟睡していた筈の仁王まで今も尚眠りこけているとはどういうことか。結局二人は目的地に到着するまで目を覚ますことはなかった。





「こっちや!」
大阪に着くと白石だけでなく、他の四天宝寺の面々も出迎えてくれた。
「ククッ……」
「どうしました、仁王くん?」
「おん。面白いもんが見れそうち思ってな」
「面白いもの?」
首を傾げる柳生に仁王はほれ、とある一点を指す。
「……あ。」
「ロックオンv」
そこには真田に貼り付く金色の姿があった。
「ああいうからかい甲斐のあるタイプ、好きそうじゃもんな。今日一日ずっとへばりついてるんじゃなかの?」
「……御愁傷様です……」







「アナタみたいなタイプも好みよv」
「そりゃどーも」

一行は白石に連れられお好み焼き屋に入った。柳生はジャッカルの頭をたこ焼き仕様にしようとソースや青のりを抱えた丸井と金太郎を諫めている。その様子を遠くから眺めていた仁王に金色が話し掛けた。

「天才は読唇術も出来るのかのう?」
「ウフフ。カッコイイ男の子の声は自然に耳に入って来るのv」
「便利じゃな」
「仁王雅治君。立海大付属中学校3年B組14番。テニス部所属であだ名はコート上の詐欺師。月刊プロテニスの恋人にしたいランキングで二位獲得。今年のバレンタインチョコ獲得数は七十個。モテモテなのに彼女ナシ。何故かしら?」
「さあ、何でかのう」
フフ、と金色は笑う。
「――柳生君、カワイイわね」
「手ェ出すんじゃなかよ」
「安心して、女の子には興味ないから」
「……わかる?」
仁王は溜め息をつく。
「判るわよ。あの子のあれ、男の骨格やないもの」
「スケベ。」
「アンタ程やないわ。ベタベタし過ぎや自分」
「プリッ」
「あの子、これからますます綺麗になって行くでぇ」
金色はその目を三日月型に細める。
「健闘を祈るワ」
ほなな、と仁王に投げキッスを送り、彼は皆の輪の中に戻っていった。



「健闘、ねぇ」
仁王は机に突っ伏す。
「それ、どっちの意味かのう……」




   



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