仁王はその身体を柳生に密着させた。互いの息使いさえ判る程の狭い空間で、柳生は目を白黒させるしかなかった。 端正な顔だち。金に光る瞳を長い睫毛が縁取る。まじまじと見たことはなかったが成程、女子が騒ぐのも頷ける。 ――確か、月刊プロテニスの恋人にしたいランキング二位でしたっけ(一位は氷帝のあの方でした。流石ですね) と、不意に頭を抱え込まれる。 ああ、多少見つめ過ぎたようですね。仁王くんは照れると相手の目を見れなくなるのでした。クールに見えて、実に可愛らしい方です。 でも、あら? 仁王くん…… 「おーい、先生行っちまったぜぃ。出てこいよ仁王…俺らのクラスにもそろそろ担任来るかもしんねーから戻ろうぜ!って仁王どこだ?」 「ま、丸井くーん!!」 「比呂士!?」 丸井はもそもそ動く布団に手を掛ける。そのまま剥がすと柳生をガッチリと抱え込んで眠る仁王の姿があった。 「仁王くん、意外に力が強くて脱け出せないんです……」 涙目の柳生に丸井は頭を抱える。 「おい仁王!比呂士、困ってるだろぃ?」 「ん……ブンちゃんうるさいー」 仁王は伸ばされた手を払い退け、より強固に柳生を拘束した。 「ZZZ…」 「抱き枕か!っていう…」 「どうしましょう、丸井君」 「……しょうがねーから仁王はここに置いてくぜぃ」 「え!?」 「見廻りは荷物を布団にくるんでやり過ごすから、そいつ一晩シクヨロ!」 「ちょ!丸井君!!」 丸井は二人に布団を被せると、あっという間に部屋を出ていった。 ――ああ、なんということでしょう!! 思春期の男女が抱き合って一つの布団に寝るなんて。いけません、それはいけません。 仁王くんがくっついている限り誰も私の身体に触れる事は出来ませんし、寝間着が多少乱れても仁王くんで隠れます。あられもない姿を曝すこともないでしょう。 幸い仁王くんは私が女だということを知りません。これは男同士のスキンシップだと、そう割り切ってしまえばこれは正体を隠す上で幸運なこと。 でも私の心臓はどうしても早鐘を打ってしまうのです。 「仁王くん……」 ――どうか邪な私を許して下さい。 |