男子はクラス内で一班二班に分かれ、班ごとに部屋が宛がわれた。就寝時間は疾うに過ぎたがわんぱく盛りの生徒たちが大人しく寝る筈もなく、敷かれた布団の上で思い思い過ごしていた。

同じ班になった真田は既に寝息を立て就寝している。
(何と羨ましい)
今夜は恐らく眠れないであろう。移動のバスの中で寝ればいいかと柳生は溜め息をついた。と、その時。

「なーに湿気た面しとんのじゃ、やーぎゅ」
「に、仁王くん!?」
「俺もいるぜぃ!なあこれ食う?キャベツ太郎っての。美味いぜ?」
「丸井君まで……!」

菓子をちらつかせながら、目の前に二人が現れた。

「どうされたのですか、二人とも」
「悪戯しに来たぜよ」

そう言って二人はニッと笑い、懐から油性ペンを取り出した。

「よう寝てるのう、真田」
「じゃ、額に肉って描くぜぃ」
「いやいや、ここは『春日』でどうじゃ?」
「お、それイーじゃん。トゥース!」
「真田のココ、空いてますよっ」
「あ、あの……」

嬉々として真田に群がる二人を見兼ねて柳生は声をかける。

「なんじゃ、柳生もやるかの?」
「いえ、あの、可哀想だから止めませんか?」
「柳生は優しいのう」
「いつもガミガミやられてるんだぜ?これくらい良いだろぃ……」

ふと、丸井が柳生の顔を覗き込んだ。

「何ですか?丸井君」
「や、最初比呂士って判らなかったなと思って」
「ああ、眼鏡ですね。流石に寝る時は外しますよ」
「人の顔の判別は付くの?」
「元々裸眼でも0.6はありますから。大丈夫です」
「ふーん。だったら普段外しときゃいーのに。そっちの方が断然イイぜ」
「そうですか?」
「おう。かわい……ふご!!」
「仁王くん!?」

隣にいた仁王が突然丸井の口にうまい棒を三本突っ込んだ(袋ごと)。

「何やってんですか貴方!」
「……俺は柳生さん、眼鏡の方がイイと思う」
「にお……」

その時、部屋の扉が荒々しく開かれ、外に買い出しに行っていた級友が飛び込んできた。

「大変だ!担任が見廻りに来た!!」
「何だって!?」
別部屋の丸井と仁王が慌て出す。
「帰るぜ、仁王……」
「駄目だ、もう直ぐそこまで来てる!」
「げ!?」
「皆、布団に潜れ!!」

――ええと、私、どうしたら!

オロオロする柳生を誰かが強引に引き寄せた。その人物は柳生を仰向けに押し倒し、布団ごと柳生に覆い被さった。

「や…っ」
「しっ!静かにしんしゃい」
「におう、くん……!」




   



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