「たるんどる!」

集合時間は過ぎたものの、柳生と仁王は無事バスに乗り込むことが出来た。乗った途端、真田の説教を受ける羽目にはなったが。

「ちゅうか部活じゃないのに何故鉄拳制裁かますんじゃ、あの男は!!先生もドン引きだったぜよ!」
「すいません、仁王くん。私のとばっちりを食わせてしまって」
「よかよ。俺が嫌がる柳生さんを無理矢理連れてきたんじゃし」
「……仁王くん、」
「すまんのう、やーぎゅ。でもね、俺ね、お前さんと一緒に修学旅行に行きたかったの」
「……」

ニッと笑う仁王に心が痛む。嫌だった訳じゃない。柳生だって皆と旅行に行きたかったのだ――こんな身体でさえなければ。

「有難うございます、仁王くん」

嬉しい。なのにその気持ちを言葉に出来ない自分を悲しく思った。



「……なーに二人の世界作ってるんだよぃ!」

ぬ、と突然丸井が二人の目の前に現れた。

「おう、デブン太。菓子食い過ぎて酔うんじゃなかよ」
「ばっか、いつも菓子食ってると思うなよ!」
そう言う丸井の手には、
「マイク?」
「そう!今日のブン太様はバスガイドなんだぜぃ!!」
そして
「えー、右手に見えますのは山、左手に見えますのも山〜」
と案内を始めた。

「……案内か?」
「いつもだったらここで桑原君のツッコミが入るのに寂しいですね」

バスは2クラスにつき一つだ。だからA組の柳生・真田とB組の仁王・丸井は同じバスで、他のテニス部レギュラーの面々は別のバス……の筈だが。

「んじゃ、後はジャッカルがきっちりガイドするぜぃ!」
「馬鹿ブン太。いつもの癖で言っちょる……」
「俺かよ!」
「「!!」」
二人は驚いて声のした方を見る。するとそこには、
「ジャッカル!?」
「フフ、俺もいるよ」
「邪魔するぞ」
「幸村君…柳君……!!」

ジャッカルのみならず、すぐ後ろの座席から幸村と柳までもが顔を出した。

「お前ら、何故ここにいるんじゃ!?」
「面白そうだから」
「は、はぁ……よく先生方が許可しましたね」
「幸村だからな」
「どんな理由ぜよ」




   



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