俺が柳生に、恋。

(でも柳生さんはオトコノコ。俺だってオトコノコじゃあ)

参謀の言う事は大概外れない。だってヤツの口癖は「〜とお前は言う」なんじゃよ?でも今回ばかりはハズレなり。だって俺が柳生を好きだとか、そんな、

(面白いヤツじゃし、一緒にいて楽しいち思うけど、でも、そうじゃな、例えばSEXとか出来るかちいうと)

『ああっ、仁王くん……!』

……

……え、

「イケちゃうかも!!」
「わああ!?」

急に立ち上がった俺に、驚く声が一つ。

「あ、ブンちゃん」
「どうしたんだ?顔、真っ赤だぜぃ」
「……何でもなかよ……」

気がつけば放課後だった。教室内には殆ど人が残っていない。

「お前さぁ、一日中ボーっとして、マジどうしちまったの?らしくないじゃん。何?悩み事?」
「……別に、そんな大層なもんじゃなかよ」

ふーん、とブン太は口の中のガムを膨らませながら言った。

「お前、今日は暇?」
「……おん」
「お?どうしたよ、いきなり不機嫌な面になって」
「気の所為じゃろ」
「もしかして、約束をドタキャンされたとか?」
「……」
「図星かよぃ」

ニシシと歯を見せて笑うブン太を睨むと、ヤツはおお怖い!て大袈裟に肩を竦めてみせた。

「じゃ、一緒に行くか、ゲーセン。奢ってやるよ……ジャッカルが!」
「俺かよ!」

その声に振り向くと、いつの間にか背後にジャッカルもいた。が、その目がいやに優しい。何故じゃ?

俺が首を捻ると、ジャッカルは憐れむような表情で俺の肩を叩いて言った。

「仁王。あのさ、今回は運が悪かっただけだぜ。お前なら又いい相手が見つかるって」

――は?

「そうそう!ほら、初恋は実らないって言うじゃん?そんなもんだって」

ブン太まで憐れみの眼差しでそう言った――って、待てコラ!!

「いつ、誰が失恋したぜよ!!」
「「お前」」

二人は間髪入れずに答えた。無駄にシンクロしおって、ばか!

「誰がフラれたって、ああ!?柳か?柳が言ったんか!?」
「んにゃ、赤也」

……赤也?

「お前が彼女にフラれて屋上から飛び降りようとしたところを止めたって言ってたぜ。で、彼女と縁が切れて嬉しいじゃろうって柳に喰ってかかったって」
「最近女遊びしなくなったなとは思っていたけど、とうとう真実の愛ってヤツに目覚めたワケ?ちょーウケるんだけどっ」
「コラ、言い過ぎだぜブン太。仁王だって人の子なんだから。でも運がなかったな、よりにもよって柳と三角関係なんてよ。浮いた噂の絶えないお前には分が悪すぎる。しかも相手、優等生なんだろ?ヤンキーのお前には……」
「――全て違うわ!!」

俺は机をガン!と蹴った。――全く、どいつもこいつも!

「行くぜよ、ゲーセン!!」

そして鞄を手にすると、俺は慌てる奴らを背に教室のドアへと向かった。



(この俺が、この仁王雅治が、)

(誰かに恋をするなんて有り得んのじゃ、絶対!)




   



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